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五感を刺激する和菓子の世界 〜蓄えの季節と甘いもの〜

五季膳の会・第三部は、完全予約制で和菓子のコースを振るまう話題の茶寮「菓子屋ここのつ」を主宰する溝口実穂さんの登場です。今年のラストを締めくくるテーブルで、どんな甘味と出会えるのでしょう?

2018.11.15 THU
五感を刺激する和菓子の世界 〜蓄えの季節と甘いもの〜 五感を刺激する和菓子の世界 〜蓄えの季節と甘いもの〜

心に静寂をつくる甘いご馳走とお茶一服

—— インスタグラムのフォロワー数は現在4万4千人を超え、和菓子好きだけでなく、クリエイターの間や海外にもファン多数。すごい人気ですよね。SHISEIDO THE TABLESで楽しめる季節の甘いものは、そんな溝口さんの手によるものです。和菓子=餡子と砂糖の味、または伝統や形式を重んじるもの、みたいな固定概念を越えて、シンプルかつ多彩に表現される世界観は、まさに和菓子進化形です。今日は、目に、心に、五感を刺激する溝口さんの和菓子の魅力について探りたいと思います。

溝口 ありがとうございます。こういった機会が初めてなので緊張しています。

—— コースでいただく和菓子とは、どういった内容なのですか?

溝口 茶寮のコースは、朝・夜と1日2回。2時間かけて6皿のお菓子を召し上がっていただいています。きっかけは、これまでいろいろな菓子屋に食べに行ってみて、一皿だとその店のことがわからないし、もっと色々な味も食べてみたい!と感じてきたこと。お店にしたのは、そういう人って私以外にもいるんじゃないかなという淡い期待と、以前、料理を学んでいて、コース料理の良さは心に留まっていたのですが「そういえば、和菓子のコースって聞いたことがないな」とある時気付いたんですよね、ならばこのスタイルで食べていただこうと、茶寮を立ち上げました。2015年のことです。

—— このコース、実はなかなかの狭き門。月に一度の電話予約は数時間でひと月分が満席になるそう。今日はスライドを見ながら、皆さんに疑似体験していただくことにしましょう。

溝口 こうしてみると、かなり食器がぐしゃぐしゃですね(笑)。お店はすごく狭くて10坪くらい。元々は材木置き場だった建物を主人が全て内装を手がけてくれました。壁や床が和紙張りです。薄暗い中に身を置くと、お客様も日常と心が離れることができるんじゃないかなと思ってこうしています。

—— 都会の茶室というような、凛とした空気感が漂っていますね。スタイルは異なりますが、”アーバンビューティーテンプル(都会の寺)”というSHISEIDO THE TABLESのコンセプトワードにも重なり合うようです。

溝口 私自身、忙しい日常と距離をおいて過ごせる、そんな場所が欲しかったんですよね。余談ですが、5〜6年前は、前の仕事をしながら京都と東京往復していろいろな店で和菓子を食べていた時期で、ストレスから今より15キロも太っていたんですよ。それが、茶寮に打ち込める環境になるとスルスルと痩せていった経験があり…。SHISEIDO THE TABLESは、銀座のど真ん中にあって、茶寮とは表現こそ異なりますが、食に対する姿勢とかお客様に対するマインドは同じじゃないかと感じます。

—— 和菓子に添えられるお茶にも思い入れがありそうですね。

溝口 お菓子とお茶の組み合わせは、茶寮の楽しみの一つ。コースはそれぞれが合わさって完結すると考えています。毎回、お菓子に合わせてお茶を選びますが、日本で美味しいお茶を作っている人ってたくさんいるんですよ。私もできるだけ畑に行って話をしたり、シーズンには茶摘みをさせてもらうこともあります。

—— お茶を飲んだ時のホッとする感じって独特ですよね。コーヒーはどこか、次のアクションへ移る活力のスイッチみたいなイメージです。

溝口 味だけでなく、目で、香りで、手から伝わる温もりにホッと癒される、お茶っていいですよね。私のお茶歴はかなり長くてですね。幼い頃、祖母の影響を強く受けて育ってきたんですが、その祖母は、朝は起きてまずお茶を入れるところから始まり、一日がお茶、お茶、お茶という人。その時々に釜炒り茶、ほうじ茶、抹茶など、たくさんの選択肢がありました。食べ物との相性や美味しくいただけるタイミングなどは、こんな日常から身に付いた気がします。

これは、小田巻(おだまき)と言ってモンブランを作るときに使うものです。何でも絞ったり、下ろしたりするのが大好きな私にとって手放せない道具の一つ。この時は、栗ではなく白あんを道明寺の餅の上に絞り出しています。白あんで上巻きを作ったら、スライスした梨を乗せて、梨をジュースにしたものをたっぷり回しかけ、スープのように召し上がっていただく一皿です。

1+1は、無限大。季節がもたらす美味しい掛け算

みかん餡とバターの最中

—— SHISEIDO THE TABLEは蓄えの季節を迎え、季節の甘いものも今日から新しいメニューに切り替わりますね。

溝口 年間を通して5シーズン味を変えていくコンセプトで、今回が一番長い期間。いずれも1/15まで食べていただける内容になっています。まずは、この最中からご紹介しますね。最中の中にみかんの皮、ましてやバターを入れて食べるお菓子って今までなかったと思うんですが、断然、オススメの食べ方です。是非バターは冷たく。少し固いバターをかじるような食感も楽しんでみてください。

黒ごまきな粉とプルーンの州浜

溝口 洲浜はきな粉を使ったとても地味なお菓子ではあるのですが、だからこそ飽きないんですよね。季節が変わって肌寒くなると、どういうわけかカロリーが高いものが食べたくなる。身体が冬に向かって蓄える準備の時期なのでしょうか。だから、良質な油分があるごまはたっぷりと。プルーンは季節のものを使い、ねっとりとセミドライさせたものを入れています。皆さん、食べたくなって来ましたか?

柚子の錦玉

溝口 錦玉は和菓子の銘菓の一つ。夏には寒天の中に金魚の細工の菓子を入れて「涼」を表現したものなどが有名ですね。私はと言うと、やはり季節の果実を入れたくて今回は柚子で作ってみました。そして、本日みなさんのお手元に配られた一皿は、今日のために別の素材で作った錦玉です。

——何でしょう?盛り付けも絵のようできれいですね。お箸で食べる和菓子っていうのも珍しい。

溝口 一つの皿の中に色をたくさん入れたくないんです。これも色だけ見ると地味じゃありません? それが食べている中に…(といって、手で口を押さえる)。どうぞ召し上がってくださいね。私、じっと見てます。(笑)

(しばし静かな時間が流れます。目を閉じて味わう方、口に含んであっと声をあげる方も)

溝口 皆さん、いよいよ話しますね。(会場に笑顔が溢れる)中から出てきたのは、マスカットなんですが、分かりましたか?そぼろのように見えるのは栗。最後にほのかな栗の香りが立つよう、すり下ろしにしています。下に敷かれたソースは、シンプルに栗と牛乳だけで作ったもの。

—— こちらも衝撃的な組み合わせ!

溝口 私はお菓子作りをする時に二種のかけ合わせというのが好きなんです。脳はそのことばかりで、実現できていないものもたくさんあります。この栗は、美玖里(みくり)という品種で、熊本の農家の方から、毎年この貴重な栗を分けていただいています。特徴は何と言っても香りと色。黄色くて良い色でしょう?マスカットは岡山のもので、今年最後のようです。名残の時期に相応しいと、今日のお菓子に使わせていただきました。

祖母とこしらえた小豆の日々が教えてくれたこと

—— 溝口さんは、小さい頃から和菓子派だったのですか?

溝口 我が家は和菓子好きというより、豆好きでしたね。毎食、何かしら豆が入っていた。おばあちゃんが毎日のように炊く小豆を「さて、何と合わせようって」って、日々考えるような子どもでした。例えば、毎回スタンダードなおはぎだと食べ飽きちゃうのから、「今日は山椒を少し入れてみようか」「あ、美味しい!」なんてことを一人面白がっていた。私は昔から友達が本当にいなくってですね、ようやく最近でき始めたんですけど(笑)、身近にいる祖母がやることを真似する、ということが遊びだったし、自然な学びになっていたと思います。

—— そんなおばあちゃんの味は、ここのつの目標ですか?

溝口 確かに私のお菓子は、懐かしいと言われることもあるんですが、もしかしたら、その方の家も何かしら菓子を作られていたのかもしれません。家庭で作られる優しい味という共通項かなと。ただ、私の中では祖母の味は真似して近づけたいというより超えたい味ですね。

—— では、溝口さんにとって美味しいお菓子とは? どんな味を目指しているのでしょう?

溝口 手軽に世界中の食べ物が手に入る時代にあって、世の中に菓子も溢れています。そんな中で素朴で飽きない味こそ私の食べたいものであり、美味しい菓子だと思いますね。
完璧過ぎない、未完成な菓子が私の求めるものです。季節を大事にしながら、その時々のベストなものを皆さんに召し上がっていただけたら幸せです。

この日は、季節のお菓子を思わせる深いプラム色のリップが素敵だった溝口さん。トークショーの前にプロが施したものですが、普段はノーメイクでメイク道具は一つも持っていないそう。なんと、きちんとメイクしたのは成人式以来7年ぶりと言うから驚きです。「お化粧って色と遊ぶことなんですね。女性の楽しみってこういうことなんだなあ」。たくさんの色に囲まれたメイクルームでは違う世界へ入っていくような自分に、ワクワクが止まらなかったと目を輝かせます。
枠にはまる事なく、自分の心が楽しい・美味しい・嬉しいと囁く声に耳をすませながら、変わり続けること。それはお菓子作りだけでなく、彼女の生き方にも符合すると感じる瞬間でした。
「お化粧も和菓子も無限の可能性があり、楽しい!」の名言は、彼女のその日のインスタグラムから。

聞き手/綾田 純子、写真/浦川 良将

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STORY

五感を刺激する和菓子の世界 〜蓄えの季節と甘いもの〜

〒104–0061 東京都中央区銀座7–8–10 SHISEIDO THE STORE 4F
TEL 03–3571–1420
営業時間 11:00–20:00(L.O. 19:30)不定休