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古に繋がる野菜たちとの、一期一会 〜ようこそ、蓄えの季節へ〜

古来種野菜をご存知ですか?自然の営みの中で純粋に育ち、私たちの遠い遠い祖先から受け継がれる この野菜を主役とする五季膳は、味わうことが心と身体に自然を宿すことだと教えてくれます。

2018.11.12 MON
古に繋がる野菜たちとの、一期一会 〜ようこそ、蓄えの季節へ〜 古に繋がる野菜たちとの、一期一会 〜ようこそ、蓄えの季節へ〜

2018年10月18日に行われた「五季膳の会〜蓄えの季節〜」

第一部では、SHISEIDO THE TABLESのフードディレクターを務める、フードデザイナー「モコメシ」小沢朋子さん × 全国の古来種野菜を扱う八百屋「warmerwarmer」高橋一也さんのお話。第二部で「五季膳〜蓄えの季節〜」をいただいた後、第三部では、SHISEIDO THE TABLESの季節の甘いものを手がける、菓子屋「ここのつ」溝口実穂さんのお話をうかがいました。まずは、第一部から。

畑の片隅で育てられる希少な古来種野菜が銀座のまん真ん中に集まる理由(わけ)

華やかな表通りの反対側、建物の奥まりにひっそりとSHISEIDO THE TABLESの入り口はあります。サインもなく、秘密扉のようなエレベーターに乗って4階へ上がれば、そこにはモダンでちょっぴり近未来的な空間が広がる。驚くのは、見たことのない野生的な野菜が主役級の料理や、人々が対話するように食事を楽しむ、そんな素朴な光景とのギャップ。ここは一体どんな場所なのでしょう?

小沢 不思議ですよね。ここは銀座のど真ん中にあって、訪れる方の心や身体が整う「都会のお寺」のような場所を目指した場所です。お寺の食といえば精進料理ですが、メニューはストイックなものでなく、精進料理の精神を自由に表現しています。旬の食材を余すことなく、丁寧に、感謝して食べるっていうことに重きをおいて、あとは楽しく食べていただこうと。これが、五季膳を含む、SHISEIDO THE TABLESのグランドメニューのコンセプトで、高橋さんが扱う古来種野菜にも通じる精神です。

高橋 僕、ここは実験の場だと思っているんですよ。書籍棚もすごく面白くて、本当に今「食とは何か」が問われている時代なんだなと、本の並びからも強く感じます。ぜひ後でご覧になってください。昨今、「人新世(じんしんせい)」というキーワードが生まれたように、人間の生の営みと自然は一体化することが大事だという生き方、考え方が台頭する中、都会にいながら、自然にあるもの・旬のものを取り入れるというライフスタイルが、これからの新しい食じゃないかと思うんです。

—— 古来種野菜は、伝統野菜とは違うんですか?

高橋 伝統野菜、在来種、固定種などと呼ばれるもの全て。辛うじて全国各地に残っているこれらの野菜を僕は古来種と名付けました。畑が身近にないと想像しにくいかもしれないんですが、自家採種と言って農家さんが実際に種を繋いで出来るのがこれらの野菜で、その一方、日持ちするよう、規格が揃うよう、甘くなるようにと、野菜や果物は日々改良されている。市場にはこの交配種野菜がほとんどです。伝統野菜は、各県毎に定義が違っていて、ある県では伝統野菜の登録制度があるなど、県ごとに伝統野菜と言っていい野菜と言えない野菜があるんです。

高橋 これ、全部大根です。全国で約110種類。その土地の風と水と土で野菜って変わるので、日本酒と同じように、地域ごとに味も性質も違います。また、人間と同じく、その土地に適応するように育っていくわけです。

—— 見とれちゃいますね。神聖な美しさを感じます。

高橋 化学じゃなくて、自然の力だと感じますね。ほんと神を感じるような野菜っていっぱいありますよ。あと、食べたものって体が味を記憶するんです古来種野菜だと。普通は、去年食べた大根の味って忘れるでしょ。でも覚えているんですよ、不思議なことに。

地方ごとの風土と歴史、先人たちの知恵。古来種野菜に宿る命をいただく

—— そして今日、高橋さんが持ってきてくださった野菜はというと?

高橋 これは中尾早生大豆と前川金時。畑はそろそろ冬の備えに入る時期なんですが、田舎の方に行くと、雪が降ると野菜は雪の中に埋もれて収穫できません。畑には野菜がなくなるんですよ。自分たちで食べるものを確保するために、保存食をつくって蓄えないと生きていけないので、こういったお豆だとかを軒下に吊るしたりして乾燥させて食べるんです。冬は貯蔵性を考えて、この豆で味噌を作ったり、納豆、煮豆とか。特に魚が獲れない場所では、豆は大切な栄養源になる。

中尾早生大豆
前川金時
甲州もろこし

小沢 なんだかゴツゴツしてる。

高橋 山梨県の甲州もろこしです、幻と言われています。ようやく、甲州もろこしを栽培している農家さんと知り合って、今日、お持ちできました。

—— 古来種のもろこしは、甘くないっておっしゃっていましたね。

高橋 今はスイートコーンが主流ですが、その遥か前に日本に入って来ている品種です。粉にして使うんですよ。日本であまり米が取れなかったところは、これを主食にして食べていたそうです。

小沢 このプロジェクトが始まってようやく2年目に差し掛かるんですが、去年の今頃はオープニングにお出しするメニューを考えていた時期で、その時初めて出会った野菜と最近ようやく「あ、これ使ったぞ!」っていうものが出てきたんですよ。

—— おかえりっていう感じ?

小沢 そう! そんな再会が嬉しい。こんなに野菜で季節を感じたっていうのは、なかったことだなって改めて思いましたね。

高橋 味について言えば、古来種野菜の大根なんて、やっぱり苦いんですよ。ただ、その苦味が漬物にすると旨味に変わるんです。味に複雑性があって、最初に口にしてからだんだん味が変わってくる。その辺が興味深いところ。

—— 複雑性のある味。そういった食材を食べる機会が減ってきた分、現代人の味覚は単純化してきたのかも。

高橋 そうだと思いますよ。

小沢 味にも正解を与えられている気がするんですよ。例えばかぼちゃはねっとりして甘いのがいい、とかね。かぼちゃって、送っていただく古来主野菜のリストにもいっぱい種類があって、きゅうりみたいな形から、平べったいものまで本当に多彩。ああ、かぼちゃって正解ないんだと気づかされる。ならば、もう自分で決めるしかないというか、”そこに在る”ことを受け入れたらいいんだって思い至りましたね。

高橋 本来の味っていうのは全て種や皮にあって、小沢さんには、その辺りを理解してもらいながら料理してもらっているので、多くの人に一物全体を味わってもらえたら嬉しいですね。

小沢 いやあ、責任重大だわあ(笑)。毎回、高橋さんには「この野菜を作るおばあちゃんはどんな風に食べているんですか?」とか聞いたりして助けてもらってます。一番大変だったのは、やっぱり一番最初。

高橋 この食材に向き合ってメニューを決めるっていうのはすごく難しいでしょうねー。

小沢 「どうやったら美味しいか」聞くと大抵「焼いて塩だ」、もしくは「茹でて塩」(笑)。

高橋 以前、料理の仕事をしていたとき言われていました。日本料理は「素材をいじくり回すな」ってね。素材の善し悪しを「引く」という日本人が携えている感性で、ぜひシンプルに味を引き出してくださいって言いましたね。

小沢 なんかもうプレッシャーです。「焼いて塩だけで美味しいのにどうしてくれる?」って。今日初めていいますけどね、ちょっとイラっとしました。(笑)そんなことないでしょうって思ったんです。今までの高橋さんの経験からそれは事実かもしれない。和食の料理人さんの方が、味をうまく引き出してきた、それもわかる。ただ、日本じゃないところでも、同じように土地に根ざしす野菜はあるわけで。

高橋 (照れくさそうに笑って)確かに、素材の味を大切にというスタイルは同じですね。

小沢 そう、料理人の心ひとつというか、野菜の個性を受け入れるスタンスがあれば、ジャンルは関係ないと思ったんです。けれど、そんな大それた事、当時は高橋さんには言えなかったので、一年越しの今、告白しました。(笑)

季節のストーリーを紡ぎ出す五つの器。 蓄えの季節は、より深く、滋味と余韻を楽しんで

—— さあ、待望の五季膳が皆様のテーブルに届き始めましたね。

小沢 SHISEIDO THE TABLESでは、一年を5つの季節に分けて、メニューの入れ替えをしています。本日スタートした「蓄えの季節」は、芽吹き・新緑・花ひらく・結実に続く最後の季節。滋養があり、春を待つ静かな大地を連想させる食材を使いました。どうぞスープは温かいうちに。

種の器:お椀 焼き栗と中尾早生大豆のスープ

小沢 まず一番大きな器から。焼き栗と中尾早生大豆のスープです。次の子孫を残す、大事な役割を持つ種である大豆と栗をたっぷりと味わってください。ローストした栗を香りと食感のアクセントに使っています。

根の器:主菜 鹿肉のロースト常盤牛蒡のソース

小沢 これから冬に向かって良質な脂を蓄えたいということでジビエを。身体を温める根野菜も入れています。常盤牛蒡のソースと一緒にどうぞ。

高橋 1830年頃から長野県でずっと受け継がれている常盤牛蒡は、筋がなくて、味があるというか、美味しい牛蒡です。

実の器:ごはん セミドライ巨峰と胡桃のごはん
葉の器:副菜 矢島蕪と蕪葉のマスタード和え

高橋 矢島蕪は、もともと滋賀県の在来の野菜の蕪なんですが、まず葉っぱが非常に美味しい。蕪は全国80種くらいある中、下の実の方は、辛みのあるかぶや、甘いかぶなど、そんなに差がないですが、葉っぱの味は多様性があって、中でも矢島蕪の葉は格別です。

花の器:副菜 カリフラワーのムースとスティルトン

小沢 スティルトンとは、イギリスのブルーチーズです。上にちょこっと乗っているのがそう。ムースの味は、カリフラワーと水と塩と少しのゼラチンだけなので、カリフラワーの優しさとスティルトンのパンチのある味を一緒に召し上がってみてください。

—— ベージュからブラウンのグラデーションが、まるで森の散策を彷彿とさせる五季膳の彩り。小沢さんの作る料理はいつも、目から入って身体で味わう感覚。口に入れると二重三重の驚きが待っています。レシピのインスピレーションはどこから?

小沢 食材を要素に分解して考えますね。例えばぶどうなら、黒くて、丸くて、甘くて、酸味もある、みたいな要素に細分化する。これは酸味と甘みがあるからドレッシングに使えるかなとか。

—— ユニーク!ちょっと化学的ですね。

小沢 もともと化学を勉強していたので、一般的な料理の組み立て方とは違うかもしれない。デザインの仕事をしていた影響も何かしらあると思います。

—— わあ、小沢さんの料理の謎が少し解けた。これからも未知なる味の経験を楽しみにしています。古来種野菜の品種は1214以上もあるそうですよ。腕がなりますね。

小沢 ふふふ。頑張ります!

第一部のトークが終了すると、お待ちかねの食事がスタート。
一つ一つを観察するように、または目を閉じて静かに味わう皆さんの姿が印象的でした。高橋さんと小沢さんはテーブルを回りながら、質問に答えたり、話の続きに花を咲かせたりと和やかな時間は続きます。

「隠れたストーリーが聞けてよかった」

「じわっと嬉しいみたいな料理ですね。地味だけど、ある意味とても贅沢」

「身体の声を聞きなさい」というフレーズをよく見聞きしますが、食べ物を大事に味わうことは、その最も身近な行為かもしれません。特に古来種野菜は、多種多様な味わいで身体に宿る自然を揺り起こし、心の奥深くにあるニュートラルな自分自身へと導く力を感じます。温かな栗と大豆のスープを口にして、無意識に顔の綻ぶ私がいました。

聞き手/綾田 純子、写真/浦川 良将


五季膳を終えた後は、第三部としてスペシャルゲスト菓子屋「ここのつ」溝口実穂さんが登場。和菓子の新しい扉を開いた溝口さんの目指す「美味しい味」とは?予約困難なコースでいただく菓子のことなど、写真を交えながら貴重なお話をうかがいました。

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古に繋がる野菜たちとの、一期一会 〜ようこそ、蓄えの季節へ〜

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