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季節の恵みをしなやかな感性で包み込む新しくて懐かしさが同居する和菓子のかたち

古き良きものを継承しながらも、はっとするような観点から“和菓子”の可能性を広げる菓子づくりをする「菓子屋ここのつ」の溝口実穂さん。大地とつながった滋味深さを生み出す原点とは?浅草・鳥越にある茶寮を訪ねました。

2018.10.05 FRI
季節の恵みをしなやかな感性で包み込む新しくて懐かしさが同居する和菓子のかたち 季節の恵みをしなやかな感性で包み込む新しくて懐かしさが同居する和菓子のかたち

和菓子の技法をベースに、季節の彩りを表現した菓子の数々

浅草・鳥越の昔ながらの下町にある「菓子屋ここのつ」は、和菓子のコースをいただく完全予約制の茶寮です。
主宰の溝口実穂さんは、SHISEIDO THE TABLESの甘いもののつくり手のひとり。季節の果実や豆を閉じ込めた寒天の冷たい菓子「錦玉」、餡と果実にバターを合わせて香ばしい皮で包んだ「最中」、さらには煎茶とセットの「ひとくち菓子」、冬場の「ぜんざい」などをSHISEIDO THE TABLESオリジナルの菓子として発案・製造。現在の「結実の季節」(2018年10月16日まで)は『葡萄の錦玉』、『干し柿と粒餡のバター最中』、煎茶とセットの『麦焦がしと芥子の実の州浜』が登場しています。

下の写真は『葡萄の錦玉』。葡萄の粒そのものと、葡萄を皮ごとピュレにした2層構造になっていて、葡萄と白インゲン豆のソースとともに食べられる一皿。寒天の食感や風味も大切にしているので、舌触りは繊細そのもの。それぞれの層によって異なる食感とともに、葡萄のみずみずしさが口のなかへと広がっていきます。

葡萄の錦玉

『干し柿と粒餡のバター最中』は、和の素材である小豆と干し柿のあまみ、うまみを、洋の素材であるコクのあるバターが口の中でとろけながらまとめあげる一皿。錦玉とともに、SHISEIDO THE TABLESの定番メニューで、季節が変わるごとに、新鮮な驚きと喜びが多くの人を笑顔にしています。

干し柿と粒餡のバター最中
麦焦がしと芥子の実の州浜

こうした「菓子屋ここのつ」の菓子を口に運ぶと、これまでの「和菓子」とは一線を画した風味や舌触りなのに、滋味深いおいしさも感じられて、ため息をついてしまうこともしばしばです。素材の組み合わせや食感などには、はっとするような驚き、気づきがあるのに、ベースには和菓子の技法があるのが感じられます。
新しいのに、なぜか懐かしい気分になれるこうした菓子はどのような思いで、つくられているのでしょう? その背景を知るために「菓子屋ここのつ」を訪ねました。

和菓子の自由さを伝えたい

東京と京都の和菓子店で働いた経歴をもつ溝口さんですが、彼女の菓子のルーツは幼少時代から多くの時間を一緒に過ごしてきたおばあさまにあるといいます。

「私、無類の豆好きなんです。というのも、昔から家ではよく祖母が小豆を炊いていました。そして、そこに季節の果物や山椒などを合わせて食べていました。子どもながらに、どんな組み合わせで食べるのがおいしいか、おもしろいかというのを考えるのが好きだったんです」

家には日本全国さまざまな産地・種類の煎茶や釜炒り茶があって、菓子を食べるときはいつもセット。お茶をいただく前は、あらかじめ取り分けておいた茶葉を食べて風味を感じる、という習慣もあったといいます。

幼少期から溝口さんが口にしてきた菓子は、現在、自身でつくっているのと同じように、必ずしも甘いものだけではありませんでした。

「日本には四季があって、その時々で旬の食材がありますよね。夏はみずみずしいものを口にしたくなります。夏の旬の食材といえば思い浮かぶものは、水分量の多いものばかり。この日本、うまくできていますよね。旬の食材を私は和菓子のコースにしてお客様に季節を6皿ほど味わっていただいています。」

4年前、23歳のときに「菓子屋ここのつ」を完全予約制の茶寮としてスタートさせたのも、そうした菓子の良さとともに、お茶と菓子によって満たされる場所と時間があることを知ってもらいたいという思いから。茶寮ではコース仕立てとなった6皿の菓子が、それぞれにあうお茶と一緒に提供されます。

「今は家でお茶を淹れる時間がない人も多いと聞きます。でも、まわりを片付けて、お茶と菓子を楽しむ時間があるだけで、日常がもっと豊かになるんじゃないかという思いがあります。日常的な意識として、そうした時間と空間があるということを知っているだけで、なにかが違うような気がしています」

お茶と菓子を楽しむ時間で日常を豊かに

静寂で満たされたその空間には、こぽこぽこぽとお茶を淹れる音だけが心地よく響いていました。茶寮では提供される全6皿の菓子は、それぞれにあうお茶とともにいただきます。余計なものが一切なくほの暗い室内は茶室のようでもあり、豊かなお茶の香りに包まれていると、心が穏やかになっていくのがわかります。

「和菓子って、これまでは持ち帰るか、喫茶で食べるかが定番のスタイルでした。ですが、時間を決めて目的地としてこの場「茶寮」に来ていただくことで、一番ベストな状態の菓子を、日常と離れゆったりとした気持ちで食べてもらう事をしたいと思ったのです」

コース仕立てなのは、さまざまなバリエーションの菓子を食べてもらいたいという思いから。

「私自身、いろいろな店に菓子を食べに行っていましたが、1種類食べただけでは、その店のことを判断するのは難しい。だから無理して何種類も頑張って食べていました。

私が食べたい和菓子とは、疲れない菓子・飽きない菓子であり、素朴好きが功を奏し、昔から我が家で作っていた菓子は唯一無二だと改めて思った事をきっかけに、煎茶や釜炒り茶といった日本のお茶のほか、中国茶や台湾茶と一緒に合わせ和菓子のコースを世の中に提案しよう!と思いました。」

菓子と料理の境界がない「糧菓」という存在

その言葉どおり、茶寮で提供される菓子は、果実や野菜、さまざまな種類の豆を組み合わせながら、それぞれの甘み、うまみ、滋味をバランスよく引き出しています。

茶寮があるごとに必ずつくるというのが、季節の果物を使ったスープ。すり流した梨のうえに、手忙豆をモンブランに見立てて絞り出したり、ミキサーにかけたイチゴを牛乳とあわせて、ドライにしたイチゴをくるんだお餅を浮かべたり。

梨のスープ

小豆、黒豆、手忙豆、さくら豆など、菓子ごとに登場するいろいろな豆にも、多彩な表情があることにも気付かされます。

6皿の中にはたいてい塩味のものもあり、スパイスを合わせることもしばしば。茶葉の出がらしを炒めて、自家製の茹で餅と絡めたり、桃に肉皮(スパイス)をあわせたり、山椒と白味噌でタルトをつくったり。寒天を細長く切って、炊いた虎豆とタピオカ、パッションフルーツと合わせたり。自由な発想とみずみずしい感性でつくられるそれらの皿々を前にすると、菓子の概念ってなんだろうと考えさせられます。

「使用する素材(例えば餅・本葛など)で菓子を部類すると“和菓子”ですが、私がつくる菓子は、自分自身でもずっと、コレ和菓子です!とは言いにくいような…。新しいジャンルが必要だと思っていたんです。そうしたときに、岐阜県多治見市で「ギャルリももぐさ」を主宰する陶作家の安藤雅信さんが“糧菓”という名前をつけてくださいました。」

「糧菓」 料理でもなく菓子でもない

一度の茶寮や茶会で数種類を提供するここのつのお菓子は、その都度のお茶に合わせられていることはもちろんだが、組み合わせの趣向が一つの物語のようになっている。それらは限りなく料理に近いお菓子であり、器使い、盛り付けもよく練られ、茶寮や茶会が終わった時の余韻と満足度は筆舌に尽くしがたい。

美味しさを加減し、全部を食べ終えたトータルでの完成に持っていくこのお菓子は、最早、菓子の領域を越えている。一定量の大きさの入れ物を糧とし、その範囲内で展開され続けているものを菓とするならば、合わせて「糧菓」となろう。新世紀のお菓子の誕生である。

百草 安藤雅信

自然や土地、人とのつながりのなかで菓子をつくる

こうして型にはまらずに“和菓子”のありかたを広げている溝口さんですが、つくる菓子は自由でいながらも、曲げられない信念のようなものも感じられます。

「浴衣や着物は、ちゃんとした着方を知らないと着崩せません。それと同じように、和菓子も伝統を知らないと、今のものをつくることはできません。でも、そのうえで自由なことをするのはありだと思っています。」

つくりたいのは、素材のおいしさが活かされた菓子。そのため溝口さんは素材として使う果実や豆、寒天などの生産者のもとをできるかぎり訪れ、それぞれがつくられた土地や背景を理解しながら、菓子づくりに取り組んでいます。

「一番すごいのは畑をやっている人。日々、畑でつくりだしている人がいて、私はそのお陰で安心して菓子作りができます。素材の話をしながらその菓子をお客様に召し上がっていただく。それが私の仕事だと思っています」

主役は菓子。でもその前にある素材に敬意をはらい、自然や土地、人とのつながりのなかでつくっているからこそ、溝口さんの菓子は新しい表現をまといながらも、大地とつながった滋味深さをしみじみと感じられるのでしょう。

聞き手・構成/岡田 カーヤ、写真/浦川 良将

溝口実穂
菓子屋ここのつ
日本に古くから伝わる事を身を以て学び、変えなくて良い事と変えていくべき事を和菓子を通して自分なりに伝えていく事が私の仕事です。
東京・浅草鳥越で、完全予約制の実店舗「菓子屋ここのつ茶寮(和菓子のコース)」を主宰。

10月18日 『五季膳の会〜蓄えの季節〜』に、SHISEIDO THE TABLESのために季節の「甘いもの」をつくってくださっている「菓子屋ここのつ」の溝口実穂さんをお招きします。菓子に対する思い、お茶と菓子をあわせる楽しさなど、菓子をめぐるお話をうかがいます。この日のためにつくっていただいた特別な菓子も登場。ここのつ×SHISEIDO THE TABLESのスペシャルな時間を体験しにきてください。

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季節の恵みをしなやかな感性で包み込む新しくて懐かしさが同居する和菓子のかたち

〒104–0061 東京都中央区銀座7–8–10 SHISEIDO THE STORE 4F
TEL 03–3571–1420
営業時間 11:00–20:00(L.O. 19:30)不定休