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現代アートと工芸をクロスさせながら季節の移ろいを伝える、銀座の新しい顔

「SHISEIDO THE STORE」のウィンドウディスプレーが秋の展示になりました。アートディレクション担当のアーティスト・ミヤケマイさんに、全体テーマ「五行」と、秋を表す「金」の章と作品について伺いました。

2018.08.28 TUE
現代アートと工芸をクロスさせながら季節の移ろいを伝える、銀座の新しい顔 現代アートと工芸をクロスさせながら季節の移ろいを伝える、銀座の新しい顔

ふたりの作家と紡ぐ「秋」と「金」の世界

日本の伝統的な美術や工芸、また歴史や哲学を取り入れながら、独自の視点で現代アート作品を発表しているミヤケマイさん。中央通りと花椿通りにそれぞれふたつずつ設けた「SHISEIDO THE STORE」のウィンドウディスプレーのアートディレクションを、「五行」をテーマに今年1月から手がけています。五行とは中国の古代哲学であり、日本の年中行事などにも深く根ざしている思想です。先人たちは「木・火・金・水」という4つの気を春夏秋冬に重ね、「土」を各季節の中間に置き、合わせて5つの気を五行として四季の巡りを促す要素としてきました。ミヤケさんは「過去に五行がテーマになった作品をつくったこともあり、 今までの私の作品のテーマでもある、ふたつの要素を対比させる“陰陽”という思想は、五行と一体なのです」と語っています。

1月のグランドオープンで春の「木」をテーマにご自身の作品から展示をスタートしたミヤケさん。2回目以降はミヤケさんが敬愛する国内外の才能豊かなアーティストや作家の方々に声をかけて、作品制作と展示構成のディレクションをしてきました。春にひと月「桜」の章を加え、夏の「火」、土用の「土」の章に続き、いよいよ8月24日から秋の「金」の章のディスプレーが始まりました。

諸泉茂さんの作品。五行にちなみ、赤・黄・緑・黒・銀の温度計を準備。5色の水平線をウィンドウ内につくった。

涼しさ、暖かさという体感を視覚化するアート

「金」の章の作品を手がけたのは現代アートの諸泉茂さんと工芸作家の満田晴穂さん。ミヤケさんが作品に信頼を置く作家さんです。「実りや成熟を表す“金”のテーマにふさわしい、内省的で豊かな作風が魅力」とミヤケさんが期待した通り、秋らしい知性と落ち着きがビル全体を包んでいます。

中央通りに面した正面エントランス両脇のウィンドウの作品を手がけた諸泉さんは、ミヤケさんが三重県の複合温泉リゾート施設「アクアイグニス」でアートディレクターを務めた時に、作品を起用したご縁のあるアーティスト。夏の気配を感じるガラスの温度計を用いて、温度に反応する水銀柱の動きで、自然の変化を視覚化する作品を発表してきました。水銀という金属を五色に着色した温度計を、色ごとに並べ、温度で見せた五本の水平線。私たちが体感する季節の変わり目を、銀座の一瞬の風景として記憶に留めます。また、それぞれのウィンドウ内に設置した温度記録用装置が描く過ぎ去っていく日々の軌跡を、オートマチックドローイングに見立てています。

  • 満田晴穂さんの作品。小さいのに視線を集める自在置物のトンボ。アルミサッシュに見立てた夏の終わりを感じると網戸に留めて。
  • 食欲の秋を連想させるオーブンプレートの上で一休みするトンボ。頭部や胴体のディテールに注目。

緻密な自在置物に聴く、微かな秋の声

花椿通りに面したふたつのウィンドウには、多くのコレクターを魅了する満田さんの自在置物の昆虫を配しました。右のトンボの世界から左のクツワムシの世界へ、晩夏から初秋という微妙な季節の動きが表現されています。自在置物とは甲冑職人の技術から派生した伝統的な金属工芸品。鉄や銅、合金を用いて昆虫や魚、鳥、甲殻類、龍など生物や架空の生き物を写実的に表現するだけでなく、胴体、脚部や触覚の節まで精緻につくり、実物のように動かせるのが特徴。テクノロジーと美が凝縮した工芸品は、ごく小さな存在にも関わらず、道行く人の視線を惹きつけます。

ミヤケさんがウィンドウの構成で留意しているのは、市中の山居として自然のもの、リアルを感じるものをウィンドウの中に必ず入れることだそう。ビルの谷間を歩きながらも「ふと足を停めた時に自然や季節を感じて欲しい」といい、「現代アートは大きなスケールのものを遠くから見ることが多いもの。そこに自然素材を用いた工芸的な要素を入れると、人々はテクスチャーや手作業の繊細さを凝視するために作品に近づきます。金の章では諸泉さん、満田さんの作品は共に俯瞰とクローズアップというように、ふたつの視点で五行の世界をより深く鑑賞できるよう意図しています」と続けました。

  • トンボが飛び交うウィンドウから、静的な秋へ移ろいを感じさせるクツワムシのウィンドウ。
  • 秋色のH鋼の廃材が、自在置物の虫たちの都会の住処。
  • 翅脈まで再現された精緻な工芸とエンジニアードな質感の建材、どちらも同じ金属である。 以上すべて、アートディレクション:ミヤケ マイ 撮影:繁田 諭

花椿通りから、アートを買える4階「THE TABLES」へ。

中央通りと花椿通りの4つのウィンドウを楽しんだら、ぜひ4階の「SHISEIDO THE TABLES」へ。エレベーターを降りたホール前のセレクトグッズショップに設けた、小さなギャラリーコーナーでは、ミヤケさん自身やディスプレー参加作家の作品を、テーマに合わせてセレクトし、展示販売しているのです。「4階のセレクトグッズショップでは、銀座からご自身の生活にアートやクラフトを持ち帰っていただけるよう、資生堂オリジナルでつくった上質なステーショナリーやファブリックなどを揃えています。1階のウィンドウの展示と連動した世界感で、作品を所有することで、アートがもっと身近になるのではと思いました」というミヤケさん。作家の世界観に触れてほしい、という思いが込められた一角では、現在諸泉さんの作品を2点展示販売しています。1階のウィンドウ越しでは体験できなかったアートの力を、4階で間近に感じてみてください。

「金」の期間販売している壁面作品「℃-PATTERN(脈動する壁面のための図柄)」(2006年)。パネル、アクリル、温度計。532×532×35mm。
同販売中の「Fluttering Heart」(2005年)。温度計。90×94×6mm。ともに諸泉茂氏の作品。問合せは「SHISEIDO THE TABLES」まで。
以上2点、アートディレクション:ミヤケ マイ 撮影:浦川 良将

アート・フーズ・ブックスをつなぐ、五行の世界

「参加作家の方々には、現代アートでは取り入れることが少ない季節感や五行の世界に挑戦していただいていると思います」というミヤケさん。ご自身も、1階のウィンドウディスプレーのアートから4階のショップで販売するアート作品とオリジナル小物の製作などを手がけながら、「THE TABLES」のフーズやブックスと連動している「五行」の大きな世界観をつくる作業を楽しんでいるそう。例えば、「金」の章に合わせて「結実」を想起させるぶどうを使った錦玉羹や本、秋の気配を感じさせるアートのストーリーを発見することは、いつもとは違う美意識の扉を開いてくれるに違いありません。アート・フーズ・ブックスまで五行のテーマでしつらえた、もうひとつの贅沢な空間「THE TABLES」は、おひとりおひとりの美への探究心を深めてくれるでしょう。

ミヤケマイ MAI, Miyake
アーティスト。日本の伝統的な美術や工芸の繊細さや奥深さに独自のエスプリを加え、過去と現在、未来までをシームレスにつなげながら物事の本質を問う作品を制作。

骨董、工芸、現代アート、デザインなど既存のジャンルを超えて活動している。大分県立美術館(OPAM)、水戸芸術館、Shanghai Duolun Museum of Modern-Art、POLA美術館などでの展示及び、現在 東アジア文化都市2018金沢 『変容する家』2018年 9月15日 - 11月4日金沢21世紀美術館と釜山市立美術館のグループ展『ボタニカ』2018年 8月24日 - 2019年 2月17 日にて展示中。

2008年パリ国立美術大学大学院に留学。作品集に『膜迷路』(羽鳥書店/2012年)、『蝙蝠』(2017年)など。京都造形芸術大学客員教授。
http://www.maimiyake.com
諸泉茂 SHIGERU, Moroizumi
1954年神奈川県生まれ。1979年多摩美術大学彫刻学科諸材料専攻卒業。1998年より「Psi」を結成しパブリックアートに参加。1999-2001年FUJINO国際アートシンポジウム企画運営。2010年台北当代芸術館にて個展開催。作品集『℃』出版。2012年「Aqua-Ignis」に作品を常設(三重県)。国内外で個展・グループ展を多数開催するほか、フィールドワークを行う。
http://moroizumi.art.coocan.jp/MOROIZUMI/MOROIZUMI-Top.html
満田晴穂 HARUO, Mitsuda
1980年鳥取県で生まれ、千葉県我孫子市で育つ。2002年東京藝術大学美術学部工芸科入学。在学中に自在置物師・冨木宗行氏と出会い、自在置物作家を目指す。2006年同大学卒業。2008年同大学美術研究科修士課程彫金研究室修了。国内外で個展・グループ展を開催。2018年9月14日より東京・銀座の和光ホールにて開催のグループ展「融合する工芸−見つけた伝統のアシタ−」に参加。
http://m-haruo.com

ミヤケマイさんが「SHISEIDO THE STORE」のウィンドウで展示した作品を出品しているアジア現代アート展が、韓国・釜山で開催中です。

「Asian Contemporary Art Exhibition <Botanica+>」
釜山市立美術館2F
2018年8月24日〜2019年2月17日
10:00〜18:00(月曜・年末年始休み)、土曜・最終水曜 〜21:00

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現代アートと工芸をクロスさせながら季節の移ろいを伝える、銀座の新しい顔

〒104–0061 東京都中央区銀座7–8–10 SHISEIDO THE STORE 4F
TEL 03–3571–1420
営業時間 11:00–20:00(L.O. 19:30)不定休