営業案内

本日カフェは通常どおりご利用いただけます。
11:00~20:00までの営業となります。

※年末年始の営業時間と店休日のお知らせ:
12/29(土)は17:00までの営業、
12/30(日)〜1/2(水)は店休日となります。

ACCESS MAP
CLOSE

時間と菌が味の深みを生む発酵のおいしさを味わう夜

SHISEIDO THE TABLES×五味醤油による在来種づくしのオリジナル味噌。つくり手である「五味醤油」六代目、五味仁さんのお話を聞きながら、味噌の食べ比べ、甘酒の飲み比べを行いました。

2018.08.27 MON
時間と菌が味の深みを生む発酵のおいしさを味わう夜 時間と菌が味の深みを生む発酵のおいしさを味わう夜

2018年8月23日に行われた「五季膳の会〜結実の季節〜」。
五季膳の会食に続き、第3部トークのゲストは、山梨県甲府で150年近く続く老舗味噌蔵「五味醤油」の六代目、五味仁さん。SHISEIDO THE TABLESオリジナルの在来種づくしの味噌が、熟成期間によってどのように変化していくのか、大豆と麹の配合を変えるとどれほど味が変わるのか。普段あまり体験することのない熟成期間や配合の違いによる味噌の食べ比べ、米麹と麦麹の甘酒の飲み比べを行いながら、五味さんのお話に耳を傾けました。

米麹と麦麹、2つの麹を使った「甲州味噌」は、昔のスタンダードだった

—— SHISEIDO THE TABLESと五味醤油がつくるオリジナル味噌の原料は、大豆が長野県の「こうじいらず」、米が山形県の「さわのはな」という在来種をつかっています。それぞれどういう特徴がある大豆と米なのでしょう?

五味 味噌をつくるには大豆と麹と塩を使うのですが、そのうち1/3〜2/3くらい大豆が占めています。だから、いちばん味に影響を与えるのが大豆になります。「こうじいらず」はその名前が表すとおり、すごく甘い長野県産の大豆です。よくある大豆の色とはちょっと違って、少し緑がかっています。

「さわのはな」はすごく粒がしっかりして味が濃い山形県のお米です。甘酒にしたときは、甘みよりは奥深さがあり、複雑な味がするお米だなぁと思いました。米に麹菌をつけて3日間おくと麹ができます。

—— こうして在来種の大豆や米を指定して味噌づくりを行うのは、かなりめずらしいこと?

五味 僕も初めてですし、全国でも多分数えるほどしかないのではないでしょうか。

—— 今日はこのお味噌をみなさんに食べ比べていただきます。お味噌は、熟成期間が違う赤味噌と、大豆と麹の分量が違う白味噌をご用意しました。甘酒は「さわのはな」でつくった米麹100%のものと、五味醤油オリジナルの麦麹でつくった甘酒を飲み比べていただきます。麦麹の甘酒って、飲んだことありませんでした。これもかなり珍しいですよね。

五味 そもそも、麦麹をつくっているところが、少ないからでしょうね。

—— 五味さんのところでは米麹だけでなく、麦麹もつくっている。

五味 そうなのです。うちが普段つくっている「甲州味噌」は、米麹と麦麹、2種類の麹を使ってつくるのが特徴です。山梨県は、昔あまりお米がとれなくて、お米の裏作だった麦で味噌をいれてつくったのが始まりといわれています。戦国武将、武田信玄なんかも食べていたという文献が残っているのです。

—— 九州だと麦麹を使った味噌が多い印象ですが、米麹と麦麹、両方が入った味噌って初めて聞きました。

五味 今となっては、ものすごく珍しいです。でも、昔は米麹だけで味噌をつくっていたほうが珍しかったのです。だって、昔はお米も満足に食べられなかったくらいだから、味噌をつくるにも麦や雑穀をいれてつくっていたという文献が残っています。だから、昔のスタンダードは米と麦を入れるほうで、現在の米麹か麦麹のどちらかを使う味噌は洗練されたスタイルのようです。

—— なるほど。むしろ、古いものをそのまま残していたら、それが珍しいものになった。

五味 そうなのですよ。まさにガラパゴス化というか(笑)。

—— そうした意味でいうと、五味醤油さんで使っている発酵用の杉樽もそうですね。

五味 味噌屋さんって全国に1000軒くらいあるのですが、その中で杉樽を使っているところは、うちを含めてほんの数十軒。最新のものを使わずにのんびりやっていたら、こちらも希少種になってしまった。

—— 五味醤油さんは、40年前に醤油づくりをやめて味噌づくりだけを残しました。そこで、杉樽も一緒にやめなかったのもすごいことですね。

五味 杉樽は100年くらい使えるのですが、新しく製造するとなるとひとつ200〜300万円の設備投資がかかるのです。40年くらい前、「木桶だと衛生的に悪い」と指導されていた時代がありました。今では考えられないことなのですが。ちょうど、木桶よりも安価で品質管理がしやすいステンレスやFRPのタンクがでてきたころですね。でも、うちは隠れて使っていた(笑)。

—— 今は、むしろ木桶の良さが見直されていますね。

五味 管理はしづらいのですが、木には目では見えない穴がたくさん開いていて、そこに蔵付きの乳酸菌や酵母がたくさん隠れているのです。だからうちなんかでも木桶ごとに味が変わってきます。メインになっている菌は2〜3種類なのですが、いろいろ補い合って生存しているので、何百種類もの菌がいると思います。

熟成期間が長くなるにつれて増す、甘さとまろやかさ

—— さて、そろそろ食べ比べを始めようと思うのですが、会場にいるかたで、お味噌づくりをしたことがあるかた、どのくらいいらっしゃいますか? ……あ、結構、いらっしゃいますね。普段、家でつくるときは、熟成期間や配合の分量を変えて、食べ比べをする機会ってあまりないから、とても良い機会になりますね。
 
五味 右から1~3番目が赤味噌です。1番右の色が薄いものが仕込んですぐ、2番目が2ヶ月目、3番目が現在(4ヶ月目)の味噌になります。3番目はあと2ヶ月で完成ですね。仕込みたてのほうが色は白くて、時間がたつにつれて色が濃くなっていきます。そして、一番左が白味噌です。白味噌といっている割には色が濃い(笑)。1月に完成して冷蔵庫で保存していたのですが、ちょっとずつ色が変わってくるのです。今回の白味噌は、大豆に対して2倍の量の麹をいれています。

—— みなさん食べてみて、いかがでしょうか?

五味 1〜2番は少ししょっぱく感じるかもしれません。3番は同じ塩分量なのにしょっぱさをあまり感じなくなると思います。これは時間がたつことで麹から甘みがでているからです。

—— 最初は、あっさりとした豆の味だったのものが、時間がたつにつれて甘みとコクが増してきますね。そして4番目の白味噌はふくよかな甘さ。全然違いますね。塩分量はどのくらいですか?

五味 1〜3番に比べて4番は、2%くらい塩分が少ないです。1〜3番は大豆と麹の分量がだいたい一緒なのに対して、4番は麹の量を倍に増やしています。だから、その分全体の塩分量も下がって、甘くもなるし、塩分も少なく抑えられるのです。

—— 五味さんの蔵でつくったからこそ感じられる味や風味はいかがでしょう?

五味 4番でいうと、もうちょっとさっぱりとした味噌になる気がしていました。大豆とか米の影響もあると思うのですが、うちの蔵付きの酵母も加わって、いわゆる米みその甘口よりは、ワイルドな感じに仕上がっていると思います。

—— 実はこのオリジナルの味噌の熟成は杉樽ではなく、FRPのタンクで行っているそうですね。それでも蔵付きの菌が、十分、味にも作用しているということですね?

五味 そう、杉樽は仕込む量が多くないとつくれないので……。でも、蔵付きの酵母や乳酸菌のおかげで、うちでしかだせない味になっています。手前味噌をつくっている人なら体験したことがあると思うのですが、同じ日に同じところで、同じ原料を使ってつくっても、味噌開きをしてみると味や風味が全然違うのです。手についた常在菌とか、部屋の温度、家にある菌が作用して味を変えているのですね。

—— さて、次は甘酒の飲み比べにいってみましょう。事前の打ち合わせで、五味さんは「麦麹の甘酒はあまりおいしくないかも」とおっしゃっていましたね。

五味 そういう予測をしていたのです。あまりおいしくなかったら、違う試飲にしようかとも……(笑)。

—— つまり今日は合格ラインだった(笑)。ちなみに、本日は「さわのはな」の米麹100%でつくった甘酒も試飲していただきますが、普段、SHISEIDO THE TABLESで提供している甘酒は、同じ「さわのはな」の米麹を使っていながらも、また製法が違うのですよね?

五味 はい。通常のSHISEIDO THE TABLESの甘酒は、米麹と同量の掛米を使ってつくっています。要は、米麹100%ではなく、硬めに炊いた米を入れているのです。
そもそもどうして甘酒が甘くなるかというと、でんぷんを分解すると糖になるから。つまり掛米を入れると、でんぷんの元が多くなるので甘みが増すのです。あとは、米麹だけだと癖があるのですが、掛米を入れることで、飲みやすくサラーッとします。

—— 確かに。普段、SHISEIDO THE TABLESで提供されている甘酒よりも、トロトロして、コクがあります。糖度はどうなのでしょう?

五味 糖度は掛米をいれたほうが高くなります。その分、発酵の時間も長くなります。米麹だけだったら8〜10時間ですが、掛米をいれると2〜4時間余計に発酵させます。

—— みなさん、麦麹の甘酒も飲まれていますね。

五味 いかがですか? いけます? おいしい?

—— 会場からは、「おいしい」「好き」という声があがってきました。米麹と麦麹をブレンドしていただいているかたもいますね。

五味 僕、試飲して「これは、人によって好き好きかなぁ」と思っていたのですが、意外に好評ですね。玄米甘酒に近い雰囲気はありますね。

—— 普通の甘酒より酸味が強いけど、体にいい感じがすごくします。

五味 これはちょっと研究したら、ヒット商品が生まれるかもしれませんね(笑)。

味噌も麹も生きている。味噌づくりのコツは楽しく、そして元気のある麹をつかうこと

—— 五味醤油さんでは、年間、100回近い味噌づくりワークショップが行われていますが、お味噌をおいしくつくるコツってあるのでしょうか?

五味 お味噌も菌なので、楽しく、ポジティブにつくったほうがおいしくできます。

—— そういえば、五味さんは「歌って踊れる味噌づくり伝道師」なのですよね?

五味 はい(笑) 味噌のつくりかたが3分でわかる「手前みそのうた」をつくりました。うちのワークショップに来た人は、歌って、踊って、味噌をつくります(笑)

—— ワークショップには、毎年参加されるかたが多いそうですね。

五味 そうなのです。1回か2回参加して、やりかたを覚えたら巣立っていくシステムになるかなと考えていたら、毎年のように来てくれる。みんなでつくったほうが楽しいからって。ありがたいですよね。

—— 確かに、みんなでワイワイ話ながらつくったほうが楽しいですよね。そのほか、つくるうえで大切なことはありますか?

五味 そうですね。大事なのは材料。選べるのであれば、大豆は近くの農家さんや、誰がつくってかわかるものを使うのがいいと思います。そして麹は、出来たてのものを使ったほうがいい。パワーがあるので。

—— なるほど!

五味 冷蔵庫で保存もできるのですが、生き物なので元気のあるうちに使ったほうが絶対にいいです。僕、うちのを買えとは言わないのです(笑)。近くでつくられたもののほうが、フードマイレージが少なくてすみますし。

—— もちろん、五味醤油さんでも注文できますね。しかし、麹って不思議な存在ですね。つくっているところによって味は違うのでしょうか? 五味醤油さんの米麹は、栗のような味がしました。

五味 見た目も味も、それぞれちょっとずつ違います。

—— 日本酒の仕込みでも麹を使いますよね?

五味 厳密にいうと、味噌で使う麹とはちょっと違うのです。麹は種麹をつけて3日間おくとできあがるのですが、そのときの温度で甘みと旨みが違ってきます。ちょっと温かめの40度くらいでつくると甘くなります。それが日本酒の麹です。味噌の麹は36〜37度くらい。旨みがよくでるのです。うちの麹はその中間くらい。ちょっと高めの温度でつくっているので、甘みも旨みも感じられます。

—— そういえば麹って、全世界にあるものなのでしょうか? 他の国では聞いたことがありません。

五味 日本と東南アジアの一部に自生しているのですが、ちゃんと飼いならしているのは日本民族だけ。日本で飼いならした菌をアメリカやヨーロッパにもっていって、お酒をつくったり味噌をつくったりしているのです。

—— 麹を飼いならすって、日本人ならではのすごい「発明」なんですね。
さて、そろそろおしまいの時間になりました。最後に改めて五味さんに質問です。ここ数年「発酵ブーム」といわれているほど、発酵の良さが見直されています。五味さんにとって、発酵のおもしろさは、どういうところにありますか?

五味 味噌づくりに代表されるように、子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで楽しめるものだと思っています。味噌づくりも、醤油づくりも、もともとご近所の人たちが集まったり、村単位でやったりしていたもの。そう考えると、もはや日本人のDNAに組み込まれたなにかのような気がします。

—— なるほど、確かにDNAに組み込まれているかも。味噌玉をつくったり、空気を抜いたり、手を動かしながら、おしゃべりが弾むし、妙にほっとする。

五味 味噌づくりが初めての人でも、やってみると懐かしく感じるって、そういうことだと思います。でも、こうした原点回帰だけでなく、今の時代にあった発酵の楽しみ方っていうのも絶対あると思うのです。だから、僕らもそれを探りながら、これからも発信していきたいと思っています。

来場したみなさんは、熟成期間や配分量によって変化する味噌や、コクのある米麹の甘酒、初めて口にする麦麹の甘酒を熱心に味わいながら、五味さんの話に大きく頷いていました。毎日の生活のなかで、昔から当たり前のように口にしている味噌などの発酵食品。改めてそのおいしさや可能性に気づかされ、魅力を再認識した夜となりました。

SHISEIDO THE TABLESでは、五味醤油でつくられたオリジナルの赤味噌が、10月から始まった蓄えの季節で登場しています。お昼に提供される古来種野菜のお弁当のお味噌汁、また今年の冬に仕込んだ白味噌は「白味噌のクリームブリュレ」でお召し上がりいただけます。五味醤油の蔵付き麹菌と乳酸菌がつくりだした滋味深い味わいをお楽しみください。

古来種野菜のお弁当
白味噌のクレーム・ブリュレ

聞き手・構成/岡田 カーヤ、写真/浦川 良将

HOME

STORY

時間と菌が味の深みを生む発酵のおいしさを味わう夜

〒104–0061 東京都中央区銀座7–8–10 SHISEIDO THE STORE 4F
TEL 03–3571–1420
営業時間 11:00–20:00(L.O. 19:30)不定休