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「食べる」に潜むおもしろい瞬間を見つけて、日常使わない感覚を開く試み

五季膳のひとくち菓子を提供しているフードクリエイター「山フーズ」の小桧山聡子さんと一緒に体験。味覚に味をつけることで、開かれる新しい感覚とは?

2018.06.28 THU
「食べる」に潜むおもしろい瞬間を見つけて、日常使わない感覚を開く試み 「食べる」に潜むおもしろい瞬間を見つけて、日常使わない感覚を開く試み

2018年6月14日に行われた「五季膳の会〜花ひらく季節〜」。
第3部のトークのゲストは五季膳のひとくち菓子を提供しているフードクリエイター「山フーズ」の小桧山聡子さん。
小桧山さんは、前回のレポートでもお伝えしたとおり、中学生のときに真夜中の台所で、鍋に手を入れてポトフを食べた経験から、「食べる」体験とともに「おいしさを感じる」経験やシチュエーションを追求。それと同時に、ワークショップやイベントを開催して、日常では使わないような感覚を使って食べることで、「食べる」ことと「動物的な肉体感覚」との繋がりを、私たちに思い出させてくれる活動を行っています。そんな小桧山さんが、この日の「五季膳の会」のために「特別な試み」を用意していただきました。

会場のみなさんは、時間がたつと口の中で味覚が変わる不思議なひとくち菓子を味わったばかり。こうしたお菓子が生まれた背景とともにある、小桧山さんの思いに耳を傾けました。

時間とともに味覚が変化するお菓子とともに、「食べること」を感じてみる。

—— さきほど会場のみなさんには「五季膳」の最後に、小桧山さんがつくった一口菓子をお召し上がりいただきました。形もさることながら、口に入れた瞬間から味や食感がどんどん変化していくという、なんとも不思議なお菓子でした。まずは、なにでできているか、素材を教えてください。

小桧山 オブラートのなかに、マリーゴールドの琥珀糖、抹茶パウダー、カモミールをパウダー状にしたもの、マリーゴールドの花びら、乾燥みかん、塩の結晶の粒が入っていました。マリーゴールドの琥珀糖は違う方法で煮出したお花の抽出液の薄いもの、濃いものと2層になっています。

—— 小桧山さんは、ライブでの実験のほか、展覧会のオープニングイベントのケータリングなどで、音楽や絵画などから感じたことなどを、味覚に変換したり、味覚を言葉に変換したりということをしています。今、みなさんにお配りしている、実験器具のような透明な平皿にはいったお菓子も、そうした試みから生まれたものと聞きました。

小桧山 はい。以前、「感覚を開く」をテーマに音楽と食のイベントをやったときでした。3種類の全然違うタイプの食べ物を用意していて、即興で弾いているピアニストに食べさせるとどうなるかという実験のようなことをしたのです。その3種類の食べ物はお客さんにも渡しておいて、演奏をしている途中、私が好きなタイミングで演奏者に食べさせるのと同じタイミングでお客さんにも食べてもらうのです。

—— その結果、どういう感じを得られたのでしょう。

小桧山 感覚的な部分でみんなと繋がれた気がしました。演奏者と私だけが体験するのではなく、会場にいるみなさんにも味わってもらったことで、演奏者と同じ身体の状態になっていたので。演奏は即興だから、どういう曲調になるかはわかりません。だから、お菓子もまったく違う3つの味を用意しました。焼き菓子のようなもの、粉状のもの、みずみずしい感覚のものをつくり、演奏を聴いて、曲調に合わせて食べさせていきました。

実験ユニット「山林 -yamabayashi-」イベント

記憶と味がリンクする?風景が浮かぶ?「味覚に言葉をつける」という体験とは

—— そして、みなさんの目の前にあるものが、そのときのお菓子のひとつなのですね。

小桧山 はい、そうです。これからみなさんには、このお菓子を食べていただいて「味覚に言葉をつける」という体験をしていただきたいと思っています。

—— 味覚に言葉をつける?

小桧山 食べて感じたことを、言葉に置き換えるという作業です。私は通常、仕事としてひとつのイメージを味覚や視覚、言語といった違う形に変換するという作業をしています。ワークショップや展示のケータリングでなど、依頼のときに与えられたイメージに対して味や見た目、提供のしかたを考えていきます。今回はその逆バージョン、味からイメージを連想して、言葉に当てはめていくということをしてもらいます。きっといつもは使わない感覚と脳を使うと思います。

—— 「おいしい」「甘い」のように、味を表現する形容詞以外のものを、味覚に当てはめてみるということですね?

小桧山 味自体が複雑なので、おそらく一言では表現できないと思うのです。この中身は、さきほどの五季膳のひとくち菓子と少し似ているのですが、オブラートのなかに、パウダー状のいろいろな味のものが包まれています。もちろん、この「答え」に「正解」はなくて、それぞれに感じる味やおいしいと思うポイントも違うはず。それがおもしろいことだと思っています。

—— たとえば、どういった表現がでてくると予想されていますか?

小桧山 記憶と味がリンクする方もいると思うし、今の気分と味がリンクしてなにかの言葉になるかもしれない。風景かもしれないし、すごく長いポエムを書いていただいてもいいかもしれない。どんな形でも表現でも、普段、ただ感じて終わってしまっている「味」というものを、もう一段階、言葉という違うものに置き換えてみる。するとどうなるでしょう。食べ物の名前をつけるという感覚でもいいかも。紙と鉛筆があるので、そこに感じたことを書き留めてみると、考えがまとまるかもしれません。

—— わくわくしますね。蓋付きのシャーレを開けて、取り出して食べるのも、実験っぽさが増していいですね。

……さて、みなさんどんな言葉が浮かんできましたか?
結構、書かれていますね。
最初のかたは『水たまり、ジャンプして……』。

来場者 まだ途中なのですが、水たまりがあって、それを飛び越えられないもどかしさがあったのです。

小桧山 おもしろい!

—— お隣の方は『夏休みの浜辺』これはどういうイメージでしょう?

来場者 最初、浜を歩いていたのだけど、途中で違う感覚があって、それが夏休みの子どもたちの忘れ物。落としたビー玉を見つけた感じがしました。

想像力を飛ばして、感覚をやわらかくすると、いつもの景色も楽しくなる

—— みなさんいろいろと書かれているので、次々と見ていきましょう。

『畳の部屋から映画を見て、庭に柑橘系の果物のなかを通り抜けた風が吹いてきて、
ようやくシャキーンと起きるまで』

『目をつぶると味に潜っていき、パチャッと目をあけて、あら、サササーと動いていく』

『遠足で山に登った。子どものころを思い出している』

『小学生の放課後、夕方の寂しさ』

『はじめてのひとりで行った海外旅行』

『ミルクにおぼれて、目が覚めて夢だったと気づく』

『鳩時計』

『森のコーヒースタンド。新雪とともに』

『新種の薬』

『初夏の香り、夏の浜辺』

『土、雨、思い出』

『届きそうで届かない、男の想い』

『瀬戸内のサイダー、夏みかん』

—— それぞれに感じ方も、表現も全然違ってくるのですね。小桧山さんは、みなさんの発表を聞いているとき、ずっとニコニコされていましたね。

小桧山 想像以上に独創的な様々なこたえが返ってきて、私が興奮してしまいました(笑)。今回の「味覚を言葉にする」ことは、頭の中でなんとなく考えるのではなく、文字で物質的に形として落とし込むことが重要だった気がしています。文字にすることで、漠然としたイメージが固定されて自分自身でもびっくりするような、答えが導き出されたのではないでしょうか。今日集まっていただいたみなさんは、すごくやわらかい感覚をおもちですね。

—— こうした普段使わない表現を試みることでの発見、おもしろさはどういうところにありますか?

小桧山 日常生活のルーティーンの中で、当たり前になってしまって何も疑わないというか、注目すらしないモノやコトの感覚って、たくさんあると思うのです。もちろん、毎日3回やってくる「食べる」という行為のなかにもいろいろなおもしろい瞬間が潜んでいます。意識的にいつものやり方をずらしてみて、脳や身体を困惑させてみると、そこから新しい見え方、感じ方を手に入れられることもあると思うのです。

今回やったのは「味覚を言葉にする」でしたが、なにかのイメージから料理をしてみたり、いつもと違う食べ方をしてみたり、少し余裕のある日には「感覚をやわらかくする」「想像力を飛ばす」というような遊びを取り入れてみると、いつもの景色も楽しくなるのではないかなと思っています。そういう些細な瞬間が、豊かさにつながっていく気がしているのですよね。

「食べること」の方法や表現をいつもと変えることで、新しい見え方や感じ方を発見することを積極的におもしろがる小桧山さん。視点をちょっとずらしたり、想像力を駆使したりする小桧山さんの姿勢に、会場のみなさんも感嘆の声をもらしたり、笑ったり。刺激を受けるとともに、自分自身でも「味覚を言葉にする」チャレンジをしたことで、これまでとは少しだけ違う意識で「食べる」ことを感じるようになったかもしれません。

SHISEIDO THE TABLESでは、今後も小桧山さんがつくるひとくち菓子がセットになった五季膳が季節ごとに登場します。時間で変わるお菓子をいただき、改めて「食べること」のおもしろさを体験してみてください。

聞き手・構成/岡田 カーヤ、写真/浦川 良将

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「食べる」に潜むおもしろい瞬間を見つけて、日常使わない感覚を開く試み

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