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枯れゆく人参の姿に深い愛情を感じ、 代々受け継がれてきた畑の花に思いを馳せる夜

古来種野菜の「花」を、ここ銀座の地でいただくとはどういうこと?フードデザイナー「モコメシ」の小沢朋子さん、古来種野菜の八百屋「warmerwarmer」の高橋一也さんに聞きました。

2018.06.28 THU
枯れゆく人参の姿に深い愛情を感じ、 代々受け継がれてきた畑の花に思いを馳せる夜 枯れゆく人参の姿に深い愛情を感じ、 代々受け継がれてきた畑の花に思いを馳せる夜

2018年6月14日に行われた「五季膳の会〜花ひらく季節〜」。

第一部では、フードデザイナー「モコメシ」の小沢朋子さん × 全国の古来種野菜を扱う八百屋「warmerwarmer」の高橋一也さんのお話。第二部で「五季膳〜花ひらく季節」をいただいたあと、第三部では五季膳のひとくち菓子を提供しているフードクリエイター「山フーズ」の小桧山聡子さんのお話を聞きました。

ここでは五季膳と古来種野菜のお話について、聞き手である岡田カーヤがレポートします。

“相模半白節成”って!? 古来種野菜は見たこと、聞いたことのない野菜のオンパレード

—— 今日も高橋さんは、会場に大きな古来種野菜をもってきてくださいました。これはなんでしょうか?

高橋 「これは長崎県雲仙の黒田五寸人参の、最後の姿です。普段食べているのが、土の中にある根っこの部分。その上はこんなにも大きくなって花を咲かせて種ができている。で、その種を採って、何十年、何百年と続く野菜をこうして守っているかたがいらっしゃる。私たちは、人参が種をつくる栄養を途中でいただいて、命をつないでいるんですね」

—— 通常、出荷する野菜の場合、花を咲かせるとそこに養分をもっていかれるから、その前に収穫する。でも、持ってきていただいた人参は種を採るためのものだから、いわゆる“人参”の部分がすかすかになっていますね。しかしこれは大きい。1メートル70センチくらいありますよね。

高橋 「畑に残しておけば、みんな花を咲かすための茎が伸びるとう立ちをして、上に花が咲いて、種ができる。野菜すべてのメカニズムです」

—— こうして目の前にしてみると、私たちは普段のその一部しか知らないことを思い知らされます。

高橋 「そうですね。昔の人たちは、種から芽がでて間引いたものから、大きくなって咲いた花、実としてできたさや、そのすべてを食べていたんです」

—— 身体の内側から美しさを目指すSHISEIDO THE TABLESは、素の自分に戻るニュートラルな場所「アーバンビューティーテンプル」と位置づけています。そして、旬のものを提供する、食材をあますところなくいただくという精進料理の考え方から「野菜の一生をあますところなく」というコンセプトが生まれて、ここで提供する食事のベースとなりました。だからこそ、小沢さんは古来種野菜にこだわりたかった。2月のオープンから約5ヶ月たちますが、苦労も多いと聞きます。かなりおふたりで綿密に連絡をとりあっているらしいですね。

小沢 「はい。平日のお昼は『古来種野菜のお弁当』と、『古来種野菜のグリルとパンのプレート』をだしているんですけど、こちらは完全に古来種野菜のみ」

高橋 「その時々にあるものを使って料理をしていかないといけないから、かなりたいへんだと思います。しかも、初めて聞く、初めて見る野菜が多い。だって“相模半白節成”っていわれてもみなさん知らないですよね? これは胡瓜なのですが、こうした野菜を私たちは年間300種類扱っているんです。正直、恐怖だと思いますよ。聞いたこともない野菜を使うというのは。それも飲食店で古来種野菜が扱われないひとつの理由。挑戦者が少ないんです」

小沢 「脅されるわけですよ、高橋さんに。古来種野菜使いたいっていうけど大丈夫? って(笑)。しかも、お品書きを1ヶ月前に決めないといけなくて」

—— やはり食べていただくからには、何を食べているか、知ってもらいたいという思いもあるから、メニューも印刷しないといけない。

小沢 「すると先行先行で用意するので、高橋さんには6月の今、8〜10月の野菜リストをいただいてメニューを考えているところです。本当に知らないものばかりなんですが、わからないなりに考えていくんです。今回『五季膳〜花ひらく季節』の実の器ではかわず瓜を使っていて、日向夏とゼリー寄せにしています。日向夏は九州の柑橘なんですけど、かわず瓜のメロンのようみずみずしくて、甘みのある果実とよく合っていて。でも、それは毎回新たな挑戦でもあるんです」

古来種野菜の短い旬が、北上していくのが見えるおもしろさ

—— 今回の五季膳も2ヶ月続いてくなかで、使用していく野菜が少しずつ変わっていきますね。このかわず瓜が、さっきでてきた相模半白節成に変わるかもしれない。五季膳は、5つの器からなる一汁三菜ですが、それぞれの器が種、根、葉、花、実を中心に構成されていて、さきほどのかわず瓜のゼリー寄せは実の器。今回、そのほかに花の器、根の器でも、古来種野菜を使用しています。

小沢 「はい。飛騨長人参、赤大根、うすいえんどうの花を高橋さんに納品していただいて花の器で使用しています」

高橋 「花はこの時期にしかたべられないもの。花を器に添えて食べるって、僕、愛だと思うんですよ。きちんと栄養をとるために、花だったり、根だったり、葉だったり、芽だったり、畑にあるものすべてを取り入れる。それっておばあちゃんの愛のようなもの。だから、小沢さんがここでつくっているのも、ある意味おばあちゃんの愛の料理に近い。五季膳には、旬のものしかありません。それを食べることで、いろいろな気づきがでてくるんじゃないかと思うんですね。

飛騨長人参の花

小沢 「当たり前のことですが、人参の花を食べると人参の、大根の花を食べると大根の味がしますね」

高橋 「ちゃんと花にも自分の味を伝えているんですよね。ちなみに、飛騨長人参、赤大根、うすいえんどうの花も飛騨高山産。ちょうど今、標高の高い飛騨高山で花が咲いているんです」

小沢 「だんだん旬の野菜が北上していくんです。こないだまで九州の花が来ていたのに、今度は違うところから来たというように。旬が移動しているのがわかっておもしろいです」

貝塚早生玉葱

—— 根の器では、貝塚早生玉葱が使われています。

小沢 「大阪で明治時代から続いている玉ねぎだそうです。クローブで香りをつけて、じっくりと焼いたあと、ヤギのチーズをのせています。ゼリー寄せみたいには鮮やかな見た目で調理するものもありますが、あまり手を加えすぎないようにも気をつけています。この玉葱は、焼きをつけてオーブンで火を入れただけ。みずみずしさが残っています」

日々挑戦を繰り返しながら、新しいスタンダードをつくりあげる

—— 今シーズンの平日、お昼のパンプレートで使われている古来種野菜には、今のところ赤大根のさやの素揚げ、相模半白節成(きゅうり)、うすいえんどうの豆苗、後関晩生小松菜、貝塚早稲玉葱、さらに黒田五寸人参の種を使っているメニューもありますね。

小沢 「通常メニューで、平日15時からいただけるおつまみプレートというのがあるのですが、そこで黒田五寸人参の種をくるみと一緒にキャラメリゼしているんです。人参の種はスパイスのクミンやフェンネル、コリアンダーと同じセリ科なんですね。だから古来種野菜の種も使えると聞いて、取り寄せて使ってみたんですよ。まぁ、スパイスですね。苦味もあるけれども、そのなかに香りもある。スパイスってスーパーの棚から買うものと思っていたら、まだ新しいものがあると思って、これは使わない手はないと思ったんです」

—— それこそ新しい気付きですよね。

高橋 「そういう新しいことにチャレンジするって、いいですよね。僕はこれまで人参の種を料理に使うって発想がなかったので、それもありなんだなっていうことに気付かされました。野菜ってこういうものだよと定義づけるのが僕たちの仕事なんですが、今まさに、これまで定義づけしてきたものを、もう一度問い直す作業をしているところなので」

—— 野菜を問い直すとは?

高橋 「ハイデガーが存在とはなにかと問い直したように、この時代において、野菜とはなにか、自分たちと自然や野菜の関係性とともに、どうして古来種野菜を残していかないといけないかをもう一度問い直す必要があると思っているんです。だから、小沢さんのように、人参の種をスパイスとして使ってみるというのは、新しい時代の流れだと思うし、それが次の世代に残るためだったら必要なことだとも思うんです」

—— これまでの既成概念にとらわれずに形を変えていくことも必要。

高橋 「はい。今、小沢さんと一緒にやっていることって毎日が挑戦。ランチにせよ五季膳にせよ、これが完成形ではないけれども、日々進化しながら必ず広がっていくものになるんじゃないかと思っています」

—— 確かに。資生堂という「美しさ」を追求している場所で、「食べる」ことに関しても、日々実験を繰り返しながら、新しいスタンダードをつくろうとしているのがSHISEIDO THE TABLES。今がまさに始まりなんだと感じています。

高橋 「だって、こうやってトークショーで種採り用の人参を前に飾ること自体、おかしいですよね(笑)。でも、枯れゆく姿をみながらごはんを食べることって不思議だけど、他ではできない経験。それもある意味実験ですよね。とくに都会の人はみたことがないので、この機会に体験していただきたいです」

小沢 「私、今1歳半の娘がいるんですけど、この人参を見ていると親の気持ちになって、じーんとしてしまうんです。枯れていく根っこに自分を投影してしまって」

高橋 「人間と同じように、植物でもそれが何百年続いているわけですから」

トークのあとは、いよいよ五季膳を味わう時間です。配膳が始まると、わあっと歓声があがりました。実は、花の器には、古来種野菜の花以外にもナスタチウムの花、カタバミの葉っぱ、アマランサスの新芽などが添えられていたのです。初めて見るその草花をひとつひとつ眺めては噛み締めている姿が見られます。

食事が一段落して、小沢さん、高橋さんが会場をまわると
「この花はなんですか?」
「どんな種類なんですか?」
という質問とともに、古来種野菜の味や種採り用の人参を初めて見た感想などが告げられ、さかんに交流が行われました。

来場した多くの人が多くの気づきを得て、新しい感覚に触れられた夜となりました。

聞き手・構成/岡田 カーヤ、写真/浦川 良将


このあと第三部は、スペシャルゲスト山フーズの小桧山聡子さんが登場。
五季膳の最後に提供される不思議なひとくち菓子はどのようにして生まれたかの話をうかがうとともに、「食べること」を探求する小桧山さんに、この日のための特別な体験をご用意いただきました。

五季膳 〜花ひらく季節〜 お品書き
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・序の茶

・五季膳
 種の器|お椀
 とうもろこしの冷静スープ

 葉の器|パン
 バジルのバゲット

 花の器|主菜
 サーモンのミキュイと食用花

 根の器|副菜
 新玉ねぎのグリル クローブの香り

 実の器|はしやすめ
 瓜と日向夏のゼリー寄せ

 豆皿|おくちなおし
 琥珀糖

・結の茶
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この日の「五季膳〜花ひらく季節〜」は2018年6月14日から8月21日までの間、土日祝限定15食でSHISEIDO THE TABLESでお召し上がりいただけます。ご予約をおすすめしております。(税抜3,500円)

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枯れゆく人参の姿に深い愛情を感じ、 代々受け継がれてきた畑の花に思いを馳せる夜

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