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食べることを、からだ全体で感じる体験をつくる

フードクリエイター「山フーズ」の小桧山聡子さんが追求する、あたらしい「食の体験」をつくりだすことへの思いとは?

2018.06.28 THU
食べることを、からだ全体で感じる体験をつくる 食べることを、からだ全体で感じる体験をつくる

時間とともに口の中で味が変化していくひとくち菓子は、新しい味覚の体験。

食べることで、これまで使わなかった感覚が開き、新しい世界を垣間見たような経験はありませんか?
SHISEIDO THE TALBESの「五季膳」で最後に供されるのは、食べることがワクワクと楽しい冒険であるかのようなひとくち菓子です。オブラートにのった目にも鮮やかな“食べ物らしきもの”を包んで、ぽんと口の中に放り込むと、口の中で予期せぬ出合いが次々と起こり、美しい余韻を残して消えていくという不思議なお菓子です。

このお菓子をつくったのは、「山フーズ」として活動しているフードクリエイターの小桧山聡子さん。「食べること」をからだで感じられるケータリングやイベント企画、ワークショップ、レシピ提供、大学での講義、執筆など、「食とそのまわり」の提案を行う活動をしています。

「五季膳のひとくち菓子は、時間で変化するお菓子なんです。ベースはまんなかに置いてある琥珀糖。寒天と砂糖でつくった和菓子なのですが、できるかぎり甘さを落として、花やミルクなどのパウダー、スパイス、塩の結晶、フルーツのかけらなど、その時々に応じてさまざまなフレーバーを組み合わせています。オブラートに包んで口の中にいれると、じわーっと溶けたり、噛むと食感があったり、塩の粒にかりっと当たったり。口のなかでいろいろな味が混ざり合って、時間とともに味わいが変化していって、余韻を残すものにしました」

4〜6月中旬の「五季膳〜新緑の季節〜」で登場したのは赤いひとくち菓子。バラの香りを移したシロップを使った琥珀糖に、クランベリーパウダー、カイエンヌペッパー、ドライラズベリーの粒、べっこう飴が入ったものでした。

食べる前はこれらがどういう味であるかは知らされていないので、運ばれてきた赤いひとくち菓子を前にすると、初めて見る形状に驚きながら「これはどんな味がするのだろう?」と想像がふくらみます。実際に食べてみると、うっとりとするバラの香りに、甘酸っぱいベリーの風味が混ざり合うなか、予想しなかったピリっという辛さ、さらにはぱりっという食感がやってきて、次々と巻き起こる感覚の変化に驚いているうちに、それぞれの味わいの記憶をからだへと残して消えていくという、新しい食べることの体験でした。

食べることへの好奇心は、ポトフの鍋に手を入れたときの強烈な原体験から。

ワークショップ「食べられる器」

小桧山さんは、普段から「食べることってなんだろう? いつも当たり前のように感じている“おいしい”ってどういうことなんだろう?」」ということを考えて、数多くのワークショップやイベントを実施。普段使わない感覚を使って食べることを試みています。

普段は食べない器やフォークまで食べたらどんな気持ちになるだろう? そんな思いから子どもたちのワークショップでは、フォークやスプーン、器などを食べられる素材でつくり、つくった器にごはんを盛り付けして食べ、最後は器やフォークもたいらげ、机の上にはなにもなくなってしまう体験をつくりました。

実験ユニット「山林 -yamabayashi-」イベント

音楽に味をつけたらどうなるだろう? あるピアニストのライブでは曲調が変わるタイミングで味が変わるよう層になった飴をつくって、演奏が始まると同時にみんなで舐めて、音楽を味わいとともに楽しむ体験をつくりだしました。また、違うライブでは即興で演奏しているミュージシャンになにかを食べさせたら、どのように演奏が変わるだろう?そんな好奇心で、白衣を着た小桧山さんが長いピンセットで食べ物をミュージシャンの口にいれると同時に、観客も同じ食べ物を口にいれ、その変化を楽しむという体験も企画しました。

小桧山さんがこうした「食べることの体験」にこだわるのは、中学生のときの強烈な原体験があったからだといいます。

「真夜中に台所へ行くと、夕飯の残りのポトフの鍋が置いてあったんです。そのときなぜか手を入れてみたくなって、鍋のなかに手を入れて肉をつかんで食べたんです。まだスープが生ぬるくて、そこに手を入れている罪悪感と高揚感が入り混じった感情が湧き上がってきたんです。肉を手で口に入れると、手からの触感と口の中の食感の違いだったり、噛みしめると、深夜静まり返った台所で肉を咀嚼する音がくちゃくちゃと響き渡ったり、飲み込むと食道をとおって胃に落ちていく感じだったりとかが、普段食べている食事と全然違っていて、『食べる』という行為が鮮明に浮かび上がってきたんです」

「食べる」ことを探ることで、遠くなってしまった身体感覚を取り戻せれば。

新宿伊勢丹バレンタイン催事で制作した売場「チョコレート鉱山」

ポトフの鍋に手を入れた体験したことで、昨日までは当たり前だと思っていた「食べる」ことの景色が180度変わってしまったという小桧山さん。以降、身体的な感覚をともなう「食べる」という行為に興味をもつようになり、ちょっとした仕掛けやワークショップで、食べることをからだで感じる体験をつくりだしているといいます。

小桧山さんのバックグラウンドには、美術大学でインスタレーションなどの制作をしてきたアートの要素、学外で活動してきた舞踏などの身体的・音楽的な要素もあります。そんな小桧山さんがつくりだす「食べる体験」をすると、「食べるってこれほどまでにいろいろな感覚を使うものだったのか」と改めて思い知る人が多いといいます。

「今の生活って、いろいろなものが肉体的な感覚から遠くなってしまっている。でも、食べることは、男性も女性も、子どももおとなも、みんながやっていること。食べることをきっかけに、自分の動物的な部分に触れて、肉体的な感覚と向き合っていくのは、日常生活でいろいろ役に立つのではないかとも思っているんです」。そう笑顔で語る小桧山さん。その瞳の奥からは、食べるという行為への飽くなき探究心とともに、動物的な直感を信じるしなやかな強さが感じられました。

聞き手・構成/岡田 カーヤ、写真/浦川 良将


6月14日に行われた「五季膳の会〜花ひらく季節〜」は、小桧山さんがスペシャルゲストとして登場。
あたらしい五季膳のひとくち菓子とともに、この日のためのスペシャルな体験を用意していただきました。

小桧山聡子
山フーズ(フードクリエイター)
1980年東京生まれ 多摩美術大学卒業。素材としての勢い、料理としての勢い、美味しさ、を大切にしながら”食べる”をカラダ全部で体感できるような仕掛けのあるケータリングやイベント企画、ワークショップ、レシピ提供、撮影コーディネート、執筆、講師など多様な角度から「食とそのまわり」の提案を行い活動している。

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食べることを、からだ全体で感じる体験をつくる

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