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何百年と命がつながれてきた 古来種野菜を食べ、自然の循環を感じる

通常の流通にのらない古来種野菜を、銀座で食べていただくという挑戦。フードデザイナー「モコメシ」の小沢朋子さん、古来種野菜の八百屋「warmerwarmer」の高橋一也さんに聞きました。

2018.06.28 THU
何百年と命がつながれてきた 古来種野菜を食べ、自然の循環を感じる 何百年と命がつながれてきた 古来種野菜を食べ、自然の循環を感じる

2018年4月19日に行われた「五季膳の会〜新緑の季節〜」。

五季膳の会は、SHISEIDO THE TABLESの食の生産や流通に関わる方々のお話に耳を傾けながら、「野菜の一生」である「種、根、葉、花、実」を丁寧に調理し、5つの器へ盛り付けた、季節を味わう一汁三菜「五季膳」をいただくイベント。

前半のトークでは、フードデザイナー「モコメシ」小沢朋子さん × 全国の古来種野菜を扱う八百屋「warmerwarmer」の高橋一也さんのお話。
「新緑の五季膳」をいただいたあと、後半のトークでは、鴨川でエディブルフラワーを生産している「GRAND ROYAL green」井上隆太郎さんのお話を聞きました。

ここでは新緑の五季膳と古来種野菜のお話についてレポートします。

種を採り、命をつなぐ古来種野菜。その尊さとおいしさを知る。

—— 高橋さんは今日、なんと1メートル近くもある長い大きな箱を抱えて会場にいらっしゃいました。箱の中から現れたのは、花が咲いた蕪と大根。そして、種を採るために農家の方が保存していた茶色く乾いた芥屋(けや)かぶと据(す)わりかぶのサヤ。どちらも高橋さんが扱っている古来種野菜ですね。

高橋 「ね、すごいでしょ。これ福岡県の農家のかたにわけてもらったんです」

—— 高橋さんは、古来種野菜という存在を知ってもらうための活動をこうしてエネルギッシュに行っていますよね。実は「古来種野菜」とは、高橋さんの造った言葉だとうかがいました。

高橋 「一般には伝統野菜、在来種、固定種、地方野菜などと呼ばれていますが、こうした言葉の定義を超えて、とにかく多くの人に知ってもらいたいという思いから、親しみやすい“古来種野菜”という名前をつくったんです。普段流通に乗らないこうした野菜の生産者の多くは高齢者。このままでいくと途絶えてしまうかもしれない。それではいけないという思いがありまして」

—— 本日の「五季膳の会」でも、参加者のみなさんにこうした古来種野菜を実際にご覧いただきながら話をしていきましょう。
普段、大根や蕪は根っこの部分だけを見ているので、こうして繋がったままの状態を見るとすごいなぁと圧倒されてしまいます。こちらの乾いたものは、栄養を種に送って根の部分がすかすかになっていますね。

モコメシ 小沢朋子さん(以下小沢) 「私も初めて見たとき、感動でじんときました」

高橋 「こうやって種が実ったものを、逆さにして干します。その後、サヤを叩いて種を採るんですけど、最後、種にすることを農家さんは、いつも“種をあやす”っていいます。そう“子どもをあやす”の“あやす”です。本当、子どもと同じなんですよね。叩いて種を落とすという作業が何百年にもわたって行われてきました。それくらい私たち人間は食べ物を大切にしてきたんです。

—— こうして受け継がれてきた全国各地の野菜を、高橋さんは扱っているのですね。

高橋 「現在、warmerwarmerは北海道から沖縄まで90人の生産者とお付き合いさせていただいているんですけど、取扱いは約300品種。全国ではこうした野菜が1,200品種残っているという記録があります。でもきっと現在改めて調査をしたら2,000品種近くの古来種野菜があるのではないかといわれています。つまり、人間が生きてきた場所には必ず食べ物がありました。全国の里山、集落ごとに、その土地に土着した野菜が受け継がれてきたんです。言い換えると、その土地に適した野菜しか残らなかった。だから、化学肥料も農薬もそれほど必要としないんです。その土地の風土にあっているので。

—— なるほど、よくワインで「テロワール」という言葉が使われます。その土地の味を活かしてブドウをつくりワインにする。考えてみれば当たり前のことですが、それと同じことが、野菜でもあるのですね。その土地よって風土が違うわけですから。

高橋 「そうですね。野菜は土と水でできています。それぞれの土地で土が違うし、流れている水も違う。その結果、色や形が変わるのは当たり前のことなんです」

写真提供:warmerwarmer

—— そうした野菜は、もちろん味も違うのですね。

高橋 「そう、この写真を見てください。人間と同じように、成長が早いものもあれば遅いものもある。大きいもの、細いもの、辛いものもあれば、甘いものもある。種が同じでもひとつひとつの味も形も違うんです。大根だけで110種類近くあって、こうした大根は苦みがあるのが特徴です。食べたときにこの苦みが身体をふるわすんです。僕は最初、古来種野菜を食べたとき、最高においしいと思いました。そして、身体がふるえたんです。」

—— わかります!食べた瞬間にぞくぞくくる感じ。

高橋 「身体が喜ぶ野菜なのかもしれませんね。いつもだったら先週食べた大根の味のことはすぐに忘れてしまうんですけど、この古来種野菜は食べたときの味を一年間くらい覚えているんです。身体の中に記憶として残っていく。そういう不思議な力のある野菜なんです」

命あるもの、旬のものを大切に「野菜の一生をいただく」

—— それではこうした古来種野菜をどうしてSHISEIDO THE TABLESで扱うようになったか。その話を食べ物全般のフードディレクションを担当している小沢さんに聞いていきましょう。
SHISEIDO THE TABLESは2年前くらいから、いろんな人たちが集まり、それぞれの思いや考えをまとめていって今の形になりました。その中ででてきたのが、都会のなかのお寺的な場所になりたいという思いをこめた「アーバンビューティーテンプル」というキーワード。

小沢 「このビルの1階から3階までは化粧品が扱われています。そうした中で4階にあるこの場所では、自分が素に戻れるところ、過不足のないニュートラルな状態になれる場所にしたいという思いが初期の頃からありました」

—— だからこそ「都会の中のお寺」。

小沢 「そこからでてきたのが“精進料理”というキーワードです。でもそれはあくまでモチーフであって、本来の精進料理をだすのではなく、その精神を自由に表現したものにしたいと考えました。命あるものを大切にいただく、旬をいただく、そうしたことを表せるものがないかと考えた時に生まれたのが“野菜の一生をいただく”というサブテーマ的な言葉。野菜って、種から始まって、根っこが生えて、葉が出て、花が開いて、実がなって、そうして次の世代へ受け継がれていく。それを季節ごとにいろいろなパーツを食べて、野菜の一生を感じよう、そういうことをやりたいなと思ったんです」

—— そこで登場するのが、高橋さんの古来種野菜なのですね。

小沢 「そう、“野菜の一生をいただく”ときに、その一生がきちんと受け継がれているものが本質。一般の流通では一代かぎりで終わるお野菜が多いなか、たくさんの命がつながっている野菜を使うことが、ここでやりたいテーマの本質を支える部分ではないかと思い、高橋さんにお願いしたんです」

—— でも、こうした大きな飲食店で一般の流通に乗らない野菜を使うことはとてもたいへんなことなんですよね。つねに同じ野菜が届けられるとはかぎらないから。

小沢 「最初、高橋さんにお願いしたとき、古来種野菜はすごく旬が短い、だからこの店で扱うのは難しいんじゃないかとおどされました(笑)」

—— でも小沢さんがメニューを考え、おふたりが密に連絡をとりあうことによって、今、こうしてSHISEIDO THE TABLESで食べられています。「五季膳」のほか、平日のランチでも「古来種野菜のお弁当」と、「古来種野菜のグリルとパンのプレート」の2つを提供しています。

高橋 「生産者のかたがたも、自分たちたつくった野菜がここ銀座で食べられていることを本当に喜んでいますね。やっぱり食べてもらうことが、いちばんうれしいですからね」

古来種野菜を味わい、伸びゆく生命力を感じる「新緑の五季膳」

—— それではこれからみなさんに食べていただく「新緑の五季膳」に使われている古来種野菜とそのメニューの説明をしていきます。
「新緑の五季膳」は、5つのうつわにそれぞれ野菜の一生を表現する「種、根、葉、花、実」が盛り付けられていています。「根のうつわ」である汁物に長野県産の献上里芋が、「花のうつわ」である主菜に赤蕪の花が、「葉のうつわ」であるごはんに青梅産ののらぼう菜が、そして「種のうつわ」である副菜に三つ葉の種が使われています。

写真提供:warmerwarmer

高橋 「献上里芋は、長野の真田藩に献上していたことから真田献上里芋とも呼ばれています。実は、今年2月末、長野県の松代町で江戸時代から続いているこの里芋を守っていた84歳のおじいちゃんが亡くなってしまったんですね。

—— なんと……。古来種野菜をつくっているかたは高齢者が多いのですね。今回の献上里芋も、そのかたがつくられていたとか。

高橋 「お亡くなりになったあと畑に行ったら、最後につくっていた里芋が残っていたんです。だから小沢さんに“おじいちゃんが本当に大事にしていたから里芋をつかってほしい”と託したんです」

高橋 「結構プレッシャーでした(笑)。食べてみると、味はたんぱくなのですが、粘りがすごい。その特徴を活かすために、最低限の調味料ですりながしにしました。水と塩、そしてほんのちょっとだけお醤油が入っています」

写真提供:warmerwarmer

—— そして、主菜の鰆の塩焼きに添えられた赤蕪の花。

高橋 「ちょうどこの時期に蕪や大根の花が咲くんですよ。きれいですよね。そして、もちろん花も食べられる。この花のあと、さやがでてくるんですけど、花もさやも、しっかり蕪の味がします。生産者のおばあちゃんは、さやを漬物にしたりして食べているんですよ」

—— まさに野菜の一生を食べている!そうした話を聞くと漬物も食べてみたくなります。絶対に流通はしないでしょうけれど。

高橋 「そうなんです。なかなか流通しない。でも、知ることがだいじだと思っています」

—— 「種のうつわ」では、三つ葉の種が使われています。

小沢 「グリーンピースの包み揚げの添え塩にまぜて使っています。古来種野菜の三つ葉の種を乾燥させて、炒って、粉砕したものを、お塩と香りづけのフェンネルと合わせましたものに付けて食べてもらいます」

—— 種のそんな使いかたがあるとは!

小沢 「そうなんです。私、スパイスが好きでよく使っているのですが、種もスパイスだと気づいたんです。高橋さんから三つ葉の種があると聞いたとき、いけるんじゃないかと。種をスパイスとしてよく使われるコリアンダーと、三つ葉は同じセリ科ですし。

—— なるほど。種もしっかり三つ葉の味がします。ランチタイムの「古来種野菜のグリルとパンのプレート」でも、種が使われていますね。
小沢「はい、ランチのプレートでは、からし菜の種を使っています。食べると、生命力のようなものを感じます」

—— 「葉のうつわ」であるごはんには、のらぼう菜が使われています。この菜っぱの産地は東京ですね?

高橋 「はい、東京野菜です。東京にも江戸時代から続く野菜が本当にいろいろ残っていて、今日は青梅でつくられているのらぼう菜を使っています」

写真提供:warmerwarmer

—— 味の特徴は?

高橋 「ちょっとの苦み、そして甘みもありますね」

小沢 「高橋さんにたんぽぽの葉もいただいたので、たんぽぽの葉と、もちきびもあわせて、菜っぱ飯にしました。5つのうつわの中でも最も旬を感じやすいお皿になっているんじゃないかと思います」

ふたりのお話に耳を傾けている間、ドライレモンとレモンマートルが使われた「序の茶」が参加者のテーブルに並び、爽やかな味わいを楽しんでいただいていました。トークのあとは、いよいよ五季膳を味わう時間です。

古来種野菜のこと、生産者の思いを知り、考えたあとでいただく「新緑の五季膳」は格別のおいしさ。食事が一段落したあと、高橋さんと小沢さんでテーブルをまわり、参加者の方々とざっくばらんに話をする時間もこのイベントの特徴のひとつ。そこでの話題は、古来種野菜のおいしさや調理法、全国に残る古来種野菜を使った神事にまでおよびました。

「古来種野菜を食べることって、“時間を食べることだね”というかたもいるんです」。そんな高橋さんの言葉どおり、何百年もの間、種を採りながら、命のバトンをつないできた古来種野菜。その野菜の一生を、種、根、葉、花、実という形で食べることによって、私たち人間もその循環の中にいることを再確認するとともに、この流れを途絶えさせることなく食べ続けることも、私たちの大切な役割なのだと感じられました。

聞き手・構成/岡田 カーヤ、写真/浦川 良将


五季膳を味わったあとには、この夜のスペシャルゲストGRAND ROYAL greenの井上隆太郎さんが登場。
鴨川でエディブルフラワーフラワーを生産する活動や、一瞬の季節のうつろいである花を食べることのおもしろさ、井上さんの自然観、SHISEIDO THE TABLESに提供していただいているボタニカルシロップ……たくさんのお話をうかがいました。

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何百年と命がつながれてきた 古来種野菜を食べ、自然の循環を感じる

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