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花の時間に寄り添いながら表現する、万物の生命のうつろい

あらゆる生命が輝き出す春。その訪れを私たちに強く印象付けるのは桜の花かもしれません。SHISEIDO THE STOREウィンドウギャラリーの花の章も、桜の開花とともにスタートしました。アートディレクターを務めるミヤケマイさんは、銀座の街に春を告げる空間をふたりのアーティストとともに演出しました。

2019.04.05 FRI
花の時間に寄り添いながら表現する、万物の生命のうつろい 花の時間に寄り添いながら表現する、万物の生命のうつろい

植物の生命力を表現するアーティストとの共演

中国の古代哲学に基づく陰陽五行に、日本ならではの「花」の季節を加えた6つの章で展示を行う資生堂のウィンドウギャラリー。今年の花の章も、ミヤケさんは桜のモチーフを散りばめながら4つのウィンドウを構成しました。「古来、小野小町が“花の色はうつりにけりな”と詠んだように、花の命は短いもの。桜に代表されるようにパッと咲いて散りゆく花の時間にははかなさと美しさがあります。今回、生命の喜びを再認識する季節としての春を意識しました」というミヤケさん。短いからこそ輝きを放つ花や植物の生命と時間を表現しているアーティストである、水野暁さんと橋本雅也さんに声をかけました。
中央通りに面したウィンドウギャラリーに飾られた水野さんの作品はすべて油彩画です。右側には大作のりんごの木を、左側には春の植物を描いた作品を配しています。りんごの木の作品には、花、葉、果実と決して同じ季節に現れないものが、キャンバスに閉じ込められているのにお気づきでしょうか? 複数の季節の断章がひとつの画面に閉じ込められていて、写実がファンタジーを併せ持つこの作品に、ミヤケさんは独特の魅力を感じているそうです。

  • 水野暁さんが3年の時を積層させたリンゴの木の油彩画。写真/繁田諭(以下同)
  • 木の章に続き、花の章でもりんごをモチーフとした作品を展示し、時を繋いだ。

静的な作品に躍動感を与える構成

水野さんは対象のある現場で描く主義。りんごの木の前に大きなキャンバスを立て3年の月日をかけて観察しながら描いています。「花が咲き、受粉して結実し、秋にリンゴが実り、そして落ちる。現実の世界で起きている自然の移ろいやはかなさを目撃し、その時その時を地層のように重ねていくような感覚で描きました。一瞬のリアルを切り取る写実ではなく、常に動いている生命の時間を捉えたいと思っています。映像的に迫るような感覚で描いていると言って良いのかもしれません。その時間の層は自分にとって実感のあるものなのですが、観る人の目には結果的に幻想的に映るのかもしれませんね」という水野さん。そして場で感じるスケールや空気感なども絵画に込める「リアル」だと考えていると続けました。
また水野さんは「自分で展示をする時は白やグレーを背景にすることが多いのですが、蛍光ピンクはウィンドウを見る方をドキドキさせてくれますね」と大胆な配色と構成を評価。ミヤケさんがディレクションしたヴィヴィッドなピンクのウォールは、「静的」な作品に込められたメッセージに、現代性とコントラストを与えたようです。

  • 春の植物の作品に、生命の時間の奥行きを感じる。
  • 移ろう生命に美を見出した作品がつくり出す幻想的な世界。

緻密な白と静謐な白の世界

水野さんが昼間の天然色の桜なら、花椿通りのウィンドウにしつらえた、橋本さんによる繊細な彫刻とミヤケさんの新作の掛け軸からは、夜桜の風情が漂います。橋本さんの花々の素材はニホンジカの角と骨。花びらの柔らかな襞や葉脈の筋まで緻密に表現されていて、細部も凝視していただきたい作品です。ミヤケさんのお軸は、胡粉と雲母の型押しを天地、中回し、そして一文字と交互に施した唐紙の紙表装。こちらも光の移ろいで刻々と変える表情にぜひご注目を。「春は雄鹿の角が落ちて生え変わる季節です。掛け軸の軸先に“春日”と呼ばれる鹿の角を使いましたが、茶色い皮の部分を橋本さんが丁寧に削り、両者の作品に合うよう白く統一していただきました」。ミヤケさん曰く、漆黒の背景に夜桜のように作品が浮かぶようイメージしたそうです。右側は胡粉型押しの花瓶に墨で描いた桜のお軸と、アヤメと石を象った木彫の作品を。左側のウィンドウには資生堂にちなんで新たに制作した椿に合わせて、ピンク色のガラスの瓶子の底に桜と花びらの作品を沈めたものを合わせました。椿から桜、そしてアヤメへと、季節の移ろいもモチーフから感じ取れます。

  • 昼夜の光の変化で木版の文様が浮かび上がる唐紙のお軸。
  • アヤメの葉がたおやか。手前は土に埋めて黒く変化させた鹿子の木を彫った作品。

花の時間への飽くなき探求

ウィンドウに作品を展示するのは初めてという橋本さん。強度のある感性を持つミヤケさんによるディレクションは、予想を超えた形で作品が目の前に現れることもあり、それを楽しめたと言います。「彫刻する時に写真を使うことはまず無くて、常に植物を見ながら、そのものが持つ生命の時間を写し取る作業をしていると言って良いと思います。特に花は枯れるまでの変化が早いので、その時間に拘束されるんです。生の花を目の前にしながら、しおれていく姿を変化するままに写すことで、汲み取れるものがあるような気がしています」。そう制作のプロセスについて説明した橋本さん。花の持つ生命の時間に触れることへの興味が尽きない、と言います。
自然そのものとその移ろいを、自身が見る行為を通じて絵画と彫刻にとどめようとする二人。そして限りある生命の美しさを静かに表し、花や植物の時間を知ろうとする探究心と真摯な姿勢に共通項を見出したミヤケさんの取り合わせに、本質を見極める力を感じます。

  • 新作の椿はひっそりと咲く侘助のような佇まい。
  • ガラスの瓶子に入れた桜と花弁の作品。

花にまつわる食・知・美に触れるひとときを

4階のギャラリーでは、木の章で鶴と虎の植木鉢の作品を手がけた桝本佳子さんの作品を販売しています。今回はウィンドウギャラリーのテーマである「花」にちなみ、可憐な野の花を立体的にかたどった煎茶のカップです。蓋付の湯呑というトラディショナルな器からニョキニョキと生えた小花や葉っぱたちは、どことなく可笑しみを感じさせます。ひと月足らずの花の章の期間、 桜にちなんだ限定メニューをお楽しみいただけるカフェでゆっくりとおくつろぎください。

ミヤケマイ MAI, Miyake
アーティスト。日本の伝統的な美術や工芸の繊細さや奥深さに独自のエスプリを加え、過去と現在、未来までをシームレスにつなげながら物事の本質を問う作品を制作。骨董、工芸、現代アート、デザインなど既存のジャンルを超えて活動している。金沢21世紀美術館、大分県立美術館(OPAM)、水戸芸術館、Shanghai Duolun Museum of Modern-Art、POLA美術館、釜山市美術館などで展示。メゾンエルメス、慶応日吉往来舎、イタリア文化会館など企業や大学のコントラクテッドワーク多数。作品集に『膜迷路』(羽鳥書店/2012年)、『蝙蝠』(2017年)など。京都造形芸術大学特任教授。

http://www.maimiyake.com
水野暁 AKIRA, Mizuno
画家。1974年群馬県生まれ。「現場」で「現物」を描くことに重点を置き、写実表現を追求している。2001年多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻(油画)修了。04-05年スペイン・マドリードに滞在。コンプルテンセ大学にて美術解剖学を研修。14-15年文化庁新進芸術家海外研修制度によりスペイン・マドリードに滞在中、絵画だけでなく写真をはじめとするさまざまなメディアを横断した手法を試み、帰国後も表現の探求を続けている。14年「1974年に生マレテ」(群馬県立近代美術館)、17年「ニッポンの写実 そっくりの魔力」(北海道立函館美術館など巡回)、同年「リアルのゆくえ – 高橋由一、岸田劉生、そして現代につなぐもの」(平塚市美術館など巡回)、18年個展「リアリティの在りか」(高崎市美術館)など多数開催。東北芸術工科大学非常勤講師。

http://akiramizuno.p1.bindsite.jp/
橋本雅也 MASAYA, Hashimoto
彫刻家 1978年岐阜県生まれ。創作活動の原点は、2000年にインドの山村を旅した経験にさかのぼり、河原で木片を拾い磨いた際、手を加えることで自然物が内包していたものが表出してくる現象に興味を抱いたことにはじまる。以降、透徹な視線は一貫して素材やモチーフの奥へと向けられ、形を引き出している。近年、鹿の角、骨を素材とし、水仙や桜など作家の身近にある花々をモチーフとした作品で注目を集め、木彫作品も多く発表している。主な個展に11年「殻のない種から」(大阪/主水書房)、12年同展(東京/ロンドンギャラリー白金)、12年Showcase Gallery「風の回廊」(神奈川/横浜市民ギャラリーあざみ野)、14年「間なるもの」(金沢21世紀美術館デザインギャラリー)、グループ展に16年「生きとし生けるもの」(ヴァンジ彫刻庭園美術館)、18年「5RoomsⅡ– けはいの純度」(神奈川県民ホールギャラリー)はじめ、国内外で多数開催。

https://masayahashimoto.com/

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花の時間に寄り添いながら表現する、万物の生命のうつろい

〒104–0061 東京都中央区銀座7–8–10 SHISEIDO THE STORE 4F
TEL 03–3571–1420
営業時間 11:00–20:00(L.O. 19:30)不定休